REVIEW OF BOOKS
レビューといっても、そんなに実のあることを書いてるわけではないと思いますが。最近になって読んだ本の、まとめ、というかリストです。
更新遅いです。とても遅いです。わたしがおもしろいと思う本は、たいていの心理学の仲間と専門が外れている上に頭に入ってしまいます。批評を書いてメモしておかなければ忘れるような本は、読みたくありません。あと二年後ぐらいには、論文のまとめと化す可能性があります。
V.S.ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー『脳の中の幽霊』山下篤子訳,角川書店,1999年. ラマちゃんの本ですよー。レポート書きましたね、みなさん。わたしは、読み物として読みたかった。そしたらもっとおもしろく読めたのでしょうが。内容はノートのところを参照して下さい。わたしに分かるように書いてあるだけですが。 ラマチャンドランは脳神経学者、ブレイクスリーはサイエンスライター。 |
S.Milgram『服従の心理――アイヒマン実験――』岸田秀訳,河出書房新社,1995年. エール大教授、Stanley Milgramによって、1974年にAn experimental viewに発表された、Obedience to authority(権威への服従)という著名な論文の結果と考察。 くじで選ばれたように、教師役と生徒役を決める(くじは仕組まれている)。被験者は、記憶力に関する実験だと思っている。 ショック送電盤には15ボルト〜450ボルトまでで、「かすかなショック」「強いショック」などのショック強度が表示されている。特に375ボルトから420ボルトのスイッチには「危険、強烈なショック」とかかれており、最後の二つは「××」と表示されているだけである。 実験結果は、一般に信じられているよりも、人間が権威に服従し易く、比較的容易に残酷な行動ができることを明らかにしている。最初の実験の結果では、実に62.5%の被験者が最後の450ボルトのスイッチまで入れ、生徒を罰し続けた。被験者が真面目であればあるほど、それに伴って道徳的関心の狭小化をみる事ができる。 また被験者は、自分が生徒に対してしている事を嫌がっており、服従しながらも抗議したものも多かった。しかし、考えて口に出す事と、実際に邪悪な権威と決別する決定的な第一歩を踏み出す事の間には、自分の信じている価値を行動に移す能力という別の要因がはさまっている。主観的感情は、行動に移さない限り目前の道徳的問題とはほとんど関係がない。実験中、たびたび被験者達は自分のやっている事をけなしたが、勇気を振り絞って信念を行動に移すことはできなかった。 Milgramは、社会学者ハンナ・アレントの述べた、「悪の平凡さ」という語を引用している。「殺すなかれ」のような規範は、道徳的命令のなかでは抜群の位置を占めるものの、人間の精神構造のなかではそれと同じような強い位置は占めていないのである、と明らかにしている。 |
カレン・プライア『うまくやるための強化の原理――飼いネコから配偶者まで』二瓶社,1998年. 題名がいい。わたし好みだ(あ、単なる趣味なんですけどね)。 条件付けなどと聞くと、感情的に反発する人が研究者の中でも少なくないのだが(「条件付け」という語に「条件付けられている」のだろうか)、はっきり言って、ばかげている。人間の学習の中で、強化し、強化される関係にある学習の形体は、数多いからであり、しかも強力であるからだ。 また、行動的にはあまり効果のない、罰という方法は日常的に、しかも効果のある方法として頻繁に使用されている。しかし罰の行為者は、以下のことを覚えておかねばならない。 1.罰を与えられた人は、他者に接するときにも罰を使う傾向がある。したがって、罰を受けた子供は、友達にも罰を与えるかもしれない。同様に、子ともの時に罰や虐待を受けた大人は、子供にも虐待をする傾向がある。 プライアは、動物のトレーナーとして著名で、行動分析の専門家。 |
松岡圭祐『図解催眠操作マニュアル――集団催眠から自己催眠まで――』同文書院,1997年. マインドコントローラー・松岡圭祐の著書。おもしろかった。これだけ読むと、シュルツの自律訓練法や、筋弛緩法のやり方もあったので、読んでみるのも手だ。理論的なところはほとんど書いてなかったので、マニュアルといってもこれだけ読んでも何も分からないのだが。 |
Create
Media『日本一醜い親への手紙』メディアワークス Create Media『もう家には帰らない−さよなら日本一醜い親への手紙−』メディアワークス Create Media『子どもを愛せない親からの手紙』メディアワークス 愛憎三部作とよばれている一連の本。上の二冊は、虐待や不満を持つ子供から、その親への強烈な感情を手紙の形式に託した本。もう一冊は、その感情に気づいたという親から子供へのメッセージ。ポストイットを貼りながら読んだが、見る間に埋まったので、自分なりにおもしろく読めたということだろうか。他者が何を言おうと、この手紙を送った人の、傷ついた主観的感情は変わらないという事実的認識を持って読むといいかもしれない(もちろん、人それぞれ読み方はあろう)。この本の価値は、徹底して一つのサイドに立った、いわば偏りきったものの見方をしていることだと思う。そのことは、出発点として悪くはない。 だが、親に恨み言を言う時には役に立つかもしれないが、それ以上の価値はないことが、おもしろいことをやっているだけに残念なところだ。これはエディターの力不足と、親への短絡的な責任還元主義による。親が悪い、では、時代連鎖には対応できない。それ以前の問題として、心因性の病気というのは不良設定問題だと思われるのだが。 わたしの場合、このての本は同族嫌悪じみた感情を持ってしまって吐き気がするので、実は買ってから一年間、まったく読まなかった。自分の葛藤を自分で認められるようになって、やっと読んでみたという経緯がある。 余談だが、臨床家を志して大学の心理学コースを選ぼうとしている諸君に言いたいのは、自分が何かの体験をしたからといって、彼らに共感できるわけではないということだ。自分が拒食症の体験をしたからといって、有益なカウンセリングができるわけではない。クライエントの体験に、潰れていくカウンセラーは数多い。自分の葛藤を克服できない人間に、カウンセリングはできない。自分の葛藤を、クライエントに転化してはならない。臨床家を取り巻く環境は厳しく、成果が上がらないことも多い。「精神的に」きつい仕事なのだ。 ちなみに、選考委員の三人のコメントは、ピントが見事にずれていてとてもウケた。ギャグの領域だ。一人だけ臨床心理士がいたが、ロジャーズ型の臨床心理士の最も悪いところが出ている。臨床心理士は、どうしてこういう見方をしてしまうのだろうか。理解に苦しむ。 他にも、Create Mediaから同じような本が出ている。 Create Media『子どもを愛せない親への手紙』角川書店 |
永井均・小泉義之『なぜ人を殺してはいけないのか』河出書房新社,1998年. 哲学者による対談。なぜ人を殺してはいけないのか、という問いは、あらためて問うて見ると興味深い。法律でそう決まっているから、というアンサーでは、その法に根拠を与えるものの説明にはなっていない。それが道徳だ、というならば、やはりその様な道徳を成立せしめる根拠は何かということは説明しきれない。また、簡単な思考実験として、生存のために殺人を犯さなければならない状況を仮定した時、殺人は道義的に赦されることなのか・・・ 彼らの出した結論は、「よく分かりません」・・・哲学者の議論の帰結点としては、妥当なところだと思う。しかし、結論としてはおもしろくない。突っ走りすぎてもいいから、もっと元気のいい結論を出して欲しかった。まあ、テレビで出てくるような少年犯罪へのコメントは論外だが。 |
斎藤学『アルコール依存症に関する12章』有斐閣,1986年. アルコール依存症患者に対する接し方や社会復帰についての、一般向けの知識。専門家向けの知識は一切ないので(そういうことを目的としていない)、理念については読めるかもしれない。ちなみに、依存・依存症・中毒は、それぞれ医学的定義が異なる。 依存・・・なんらかのものを習慣的に摂取していること。この場合は、アルコールを飲む癖や習慣。好ましくないとは限らない。 |
愛染恭子『女はスケベを我慢できない』ポケットブック社,1995年. 古本屋で見つけて思わず買っちゃったんですけども、あの・・・快楽カウンセラーって・・・何すか? 表紙の裏に書いてあったやつは、 ・挿入している時、女はペニスの根元を握らせられると快感が倍増する(男もだと思うが) ・・・ははは。(今度試してみよう。ちなみに、俺のオススメテクは、Gスポット16連打!絶対イク) |