Chapter8 Memory
1. 記憶には三つの段階がある。encoding符号化、storage貯蔵、retrieval検索である。符号化は、記憶が受け取ることができる符号や表象への情報の変換に関係している;貯蔵は、符号化された情報の保持に関係している;そして、検索は、情報が記憶から取り出されるプロセスに関係している。その三つの段階は、秒単位で素材を貯蔵することを必要としている状況(ワーキングメモリ)と、もっと長い間隔で素材を貯蔵することを必要とする状況(長期記憶)を、別に操作するであろう。その上、異なる長期記憶システムは、記憶している事実、つまり顕在的記憶の一部やimplicit memory潜在記憶の一部である技能に関係している。
2. これらの変換のための、生物学的な根拠が増えている。近年の長期記憶の脳画像研究は、符号化の間活性化している脳の領域のほとんどが左半球におけるものであり、検索の間活性化している領域のほとんどは右半球におけるものであることを示している。動物研究と脳障害の人間の研究の双方からの知見は、異なる脳の領域が、ワーキングメモリーと長期記憶を実現しているのであろうということを示している。特に、人間とその他の哺乳類において、海馬システムへのダメージは、長期記憶課題のパフォーマンスに障害を与えるが、ワーキングメモリーの課題には損傷を与えない。
3. ワーキングメモリーにおける情報は、聴覚的に符号化される傾向があるけれども、我々は視覚的符号化を使用することができる。ワーキングメモリーについての多くの重要な事実は、その貯蔵能力が7±2のアイテムあるいはチャンクに限定されていることである。我々は、覚えておくことができるチャンクの数に限界がある一方で、我々はより大きな意味のある単位に入力している素材を再符号化するために長期記憶の情報を使用することによって、チャンクの数を増やすことができる。情報は、ワーキングメモリーから喪失され、忘れられるであろう。忘却の原因のひとつは、情報が時間とともに低下することであり、もう一つは、新しい項目が古いものに取って代わるからである。
4. 検索は、ワーキングメモリーがの項目が増加することにより、遅くなる。幾人かは、検索は、探索過程を含むことを示していると考える一方で、その他は活性化過程によってその結果を解釈している。
5. ワーキングメモリーは、心的算術能力、幾何学的類似性、文章についての質問の回答のような、様々な問題解決に使用される。しかしながらワーキングメモリーは、比較的単純な文の理解を含んでいるとは思われない。ワーキングメモリーはまた、永続的な記憶の中間点としても保持されている;情報はワーキングメモリーに属していると同時に、長期記憶に符号化されるであろう。
6. 長期記憶の情報は、たいていその意味によって符号化される。もしその記銘されたアイテムが意味のあるものだが相互に関係がなかったとしたら、記憶は検索路を供給する有意味な結合を付け加えることによって改良される。その付け加わったものは、素材の意味をelaborate精緻化し、その素材のよりよい記憶が成立する。
7. 長期記憶における多くの忘却の事例は、検索の失敗、つまり情報はあるのにそれを見つけられないためである。検索の失敗は、同じ検索手がかりと連合したアイテムから妨害を受けるときに、より起こりやすい。そのような妨害効果は、長期記憶からの検索が、連続的な探索プロセスを通じて達成されるのか、活性化拡散過程を通じて達成されるのかということを提案する。
8. 長期記憶からの忘却のいくつかは、貯蔵の損失によるものであり、特に新しい記憶を固定化する処理の崩壊があるときに起こる。生物学的な固定の位置は、海馬やその周辺皮質を含んでいる。近年の研究は、強化が完全になるために数週間たつと提案している。
9. 長期記憶からの検索の失敗は、項目が符号化される間に組織化されるときや、検索時の文脈が符号化時の文脈に似ているときには、ほとんど起こらない。検索処理はまた、情動的要因によっても混乱する。いくつかのケースにおいて、不安な考えはターゲットの記憶の検索を妨害している;他のケースでは、ターゲットの記憶を能動的に妨害している。さらに他の事例では、情動はフラッシュバルブ・メモリーのような記憶を強めるであろう。
10. 顕在的記憶は、再生や再認において明確に現れる記憶の種類に関係し、我々は意識的にその過去を思い出すことができる。潜在記憶は、知覚的・運動的・認知的課題の改良として、改良を導く経験の意識的な再認のないものであり、それ自身を顕在的に現す記憶の種類のことである。顕在的記憶、特に事実の再生や再認は、健忘症で落ち、潜在記憶はたいてい保たれる。このことは、顕在的記憶と潜在的記憶の分割された貯蔵システムがあるかもしれないことを提案している。
11. 健常な個人の研究はまた、顕在的記憶と潜在的記憶の分割されたシステムの存在を提案している。多くのこの研究は、プライミングと呼ばれる、例えば単語のリストの先行提示の度合いが、その後のこれらの単語の系統を完全にすることを促進するような、潜在的記憶の測定に依っている。いくつかの研究は、独立変数は、顕在的記憶がプライミングの影響を持たないことに影響を及ぼすことを明らかにする、その一方でその他の研究は、独立変数は、潜在的記憶が顕在的記憶の影響を持たないことに影響していることを示している。健常者の脳画像研究は、顕在的記憶は特定の領域の神経の活性化が増加することによって達成されるのに対し、潜在的記憶は特定の領域の神経の活性化が減少することによって達成されることを明らかにしている。
12. 我々はワーキングメモリーの容量を増加することはできないけれども、我々はチャンクの大きさを拡張するために記録しているスキーマを使用することができ、それによって記憶容量を増加させることができる。事実のための長期記憶は、符号化と検索の段階で改良できる。符号化と検索を改良するための一つの方法は、場所法やキーワード法のような記憶術に基づいた基本的な原理である、心像を使用することである。
13. 符号化やそれに続く検索を改良するもう一つの方法は、アイテムの意味を精緻化することや、符号化の間記憶素材を組織化することである (階層的な組織化が望ましいと思われる)。検索を改良するための最もよい方法は、検索のときに符号化している文脈を復旧し、それを学習している間に検索している情報を練習することを試みることである。符号化とか検索を改良するためのこれらの原理のほとんどは、PQRST法の5つの段階、概観、問い、読み、自己暗唱、検証の段階に取り入れられている。
14. 物語のような複雑な素材の記憶は、しばしば構造的である。我々は、物語や出来事のより精緻な記憶を構成するために、世界の一般的な知識を使用する傾向がある。構成は、提示された素材の付加された推測を含んでいる;それは、ステレオタイプや、人、物体、出来事や状況の分類の心的表象であるスキーマのようなものへの適用を含んでいる。
KEY TERMS
encoding 符号化 | long-term memory 長期記憶 |
storage 貯蔵 | flashbulb memory フラッシュバルブ・メモリー |
retrieval 検索 | amnesia 健忘 |
iconic memory アイコニック・メモリー | mnemonic system 記憶システム |
working memory 作業記憶 | constructive memory 構成記憶 |
memory span 記憶容量 | stereotype ステレオタイプ |
chunking チャンク | schema スキーマ |
rehearsal リハーサル |