臨床心理学

臨床心理学とは何か

 床に望む=重傷の人に、どのような援助を与えるか。
  ↓
「健康」とは
・身体的健康……発見しやすい
・心的健康……定義しづらく、捉えにくい
  1 自分の状況に何かの洞察を持つ
   →ある意味で、苦しい
  2 「今、ここ」の状況しか理解できない、しない
   →ある意味で、楽しい、苦しまない

フランクル(Frankl,V.E.)「夜と霧」極限状態に置かれた人間が、どのように振舞うか
 →ノイローゼが治るということは、苦悩する力がよみがえることである
※ノイローゼ……神経衰弱、ヒステリー ←神経症に分類される
      →「苦悩する力」を抑えたり抑圧したりすることで、負担を軽減している
       ↓
苦悩を苦悩として受け入れ、それに主体としてどう対処するのかを、自己責任で決めようとするようになる。

心的外傷体験
 PTSD(Posttraumatic-Stress Disorder)心的外傷後ストレス障害

→記憶からしめ出された外傷体験
 語ること、言語化することによってそれに直面していき、それによって葛藤や苦しみを乗り越える。
 →心理療法、カウンセリング
  ↑
 励ましなどは駄目
 似たような体験をしているからといって、同じような感じ方をするわけではない(情緒的体験を理解することは、不可能である)→年を取り、様々な経験をしているからといって、有効なカウンセリングができるとは限らない。

 医者の役割
キュープラー・ロス「死ぬ瞬間」1969年
 死=タブー
現在、末期の患者に対して医学がどのように接していくのか、が医療の現場で問題化している。
身体的ケア=医療
原因が発見される→それを取り除く作業を行う
 →成功すると、苦しみがなくなる(苦痛が大幅にやわらげられる)
  確立した診断と、治療法とその手段がはっきりしている。
    ↓
  見通しが明確である。
    ↓
  しかし、例えば不治であるということがわかったとして、その人に対してどのように接していくかを考えなければならない。
 →臨床心理学の介入
医者:助かる人を助ける
心理士:助からない人と一緒にいる
    末期患者の終わりに立ち会う
    ↓
自分の存在意義、意味を感じにくくなっている人が、そういったことを再び見出せるように援助を行う。
主観→相互主観的関わり合い(カウンセラーとクライエントの相性がはっきりと現れ、また重要)

柳田邦男「犠牲(サクリファイス)」文藝春秋

カウンセラー…相談に職業的にのる人(心理士とは限らない)
心理療法家(Therapist)…心理職 psychotherapy
臨床心理士…
精神療法家…医者 psychotherapy
心療内科医…医者
精神科医…医者

 よいカウンセラーの条件
自分のできることとできないことを、悪びれずにクライエントにいえること(Peck, M. S.)

 医療ソーシャルワーカー
医療機関で、疾病や障害などに伴い、患者や家族に生じる生活上の困難の解決や軽減を援助する、社会福祉の専門職。精神保健福祉士の国家資格が必要。

 ソーシャルワーカーと臨床心理士の違い
同じような業務内容だが、その目的や取る方法が異なり、ソーシャルワーカーは社会福祉学を専門とし、カウンセラーは臨床心理学を専門としている ←基本的な発想が違う。

 ソーシャルワーカーの業務
social worker
・MSW(medical social worker)
 対象はあらゆる人。社会福祉士。
・PSW(psychiatric social worker)
 対象は精神科。精神保健福祉士。

1. 社会福祉援助活動
2. 社会福祉援助技術(アメリカで発達)
 a直接援助技術…援助を必要としている人に、直接働きかける
  ・個別援助技術…case work。最も心理職に近い。
  ・集団援助技術…集団の力動が対象。家族のほかのメンバーも含めたフォローや、自助団体などの企画、紹介。
 b間接援助技術…地域や社会福祉施設などのインフラストラクチャーを改善する(コミュニティに対する働きかけ)
  ・地域援助技術(コミュニティ・ワーク)
  ・社会福祉調査法
  ・社会福祉運営管理
  ・社会福祉計画技術

 具体的な事例(ソーシャルワーカーが聞いた場合)
40代後半の男性
 職場転勤により、今までとまったく異なる職種に。
 体調を崩し、精神的に不安定になった。
  内科を受診 → 重度の慢性胃炎と診断
  精神科も受診 → 抑鬱状態と診断
   ↓
医療:入院治療と休職が望ましいと診断。
クライエント:転勤したてで休職したら首になるかもしれない。
       ローンや教育費もある
       週一回の通院で何とかならないだろうか。
   ↓
 医療相談所へ
   ↓
1. 医師からの依頼−クライエントの情報(診断、要望など)を聞く/面接時間の設定
2. 面接−主訴をていねいに聞く。確認。
 ただし、ソーシャルワーカーが、クライエントの問題は、クライエントの主訴とは異なる部分にあると判断することは良くある。
3. 主訴についての詳しい確認。 ※中立(第三者的な立場)で話を聞く。
 クライエントが何を訴え、何を問題にしているのか。
 どのくらい時間をかけて解決していくのか。
 どの方法を使うのか−具体的な情報の提供。social resources社会資源(法律、制度、知識、技能、資金、人的資源など)を提示し、クライエントが決定する。ここが心理職とは決定的に異なる部分。

 同じ事例を、心理職が聞いた場合(相談活動一般=カウンセリング)
CP:Clinical Psychologist
臨床心理技術者
心理判定員(テスター)
1. 医師からの依頼−クライエントの情報(診断、要望など)を聞く/面接時間の設定
2. 面接−主訴を聞く。ただし主訴の聞き方は、ソーシャルワーカーと異なる。
 共感的に聞く。クライエントの立場に近く歩み寄っていく−クライエントの主観、情緒面を中心に聞き、そこに焦点を当てる。精神状態も含めた人格が、クライエントを取り巻く状況の認識に関係しているかもしれない。※社会資源の提示を行わない。
 クライエントが自分自身を洞察していく過程に付き合う。
 期間、面接の目的は、その事例によって異なり、長期間に及ぶ。

森野礼一「心理職・福祉職をめざすひとへ」ナカニシヤ出版
ジュディス・ハーマン「PTSD」中井久夫訳、誠心書房

20世紀の二度の世界大戦によって、適正な部署に適正な兵員を配置する必要性が高まり、心理検査、知能検査、適性検査が発達した。復員によって、戦争神経症などのPTSDが問題化した。日本においては、40歳前後を境として、心理テストを主たる業務としていた人と、心理療法を主たる業務をしている人とに、歴史的に別れる。

 自閉症
先天的な対人関係のコミュニケーション障害。実際には積極的にコミュニケーションを取り始める3歳ぐらいからしか診断できないが、乳児期でも、外界の刺激に対しても反応しない傾向がある。
知的障害を伴うことが多いが、高機能自閉と呼ばれる、ある能力が偏って発達する場合がある(サヴァン症候群とは異なる)。
彼らは、「私」という存在は他者の存在なくしては存立し得ないことを浮き彫りにしたといえる。自閉症は、狭い意味での心理的要因があるだけではなく身体的要因が関係していることは明らかであるが、そのとが前述の意義をいささかも損なうことはない。心が病む、ということに関する他者の存在と重要性を明らかにしたといえよう。

児童相談所の対象は、18歳未満を対象としており、それ以上は成人として扱われる。しかし乳幼児期や児童期の研究は多く行われているが、自閉症や精神発育遅滞児などの子供が、青年期・成人期・老年期になってどのように変化して行くのかは、まだ研究が始まったばかりである。
精神発育遅滞に関しては、福祉体制の整備が始まったばかりである。精神衛生法の制定により、精神障害者の隔離がおこなわれたが、彼らの人権が問題化した。そして精神保険及び精神福祉に関する法律に改定され(精神保険福祉法)、公的機関は患者らの自立的社会生活を保証する責任があることを認めた(精神保険福祉センター、各都道府県に1つずつあり、東京は3つ)。

病院と社会の中間に位置するのが、社会復帰施設であり、急性期を脱し、症状の落ち着いた患者はホステルや病棟などの社会復帰施設に入所し、社会復帰を目指す。また、デイケアや作業所などに通所する活動もある。通所は、最終的に実際の就労を目的として取り組む。
広報援助は、相談やコンサルテーション(患者を支える一連のグループを支え、接し方や啓蒙活動を行う)を行う。

杉山登四朗「発達障害の豊かな世界」

不登校と心理臨床
 学校拒否 → 登校拒否 → 不登校
何らかの心理的な問題で、登校ができない状況

「私」を考えるということと人間を考えること
 私・・・・人と人との間で作られてきたもの
    周囲の人々との関係性で作られてきたもの
1. 心を考えるための概念的な枠組を持つ(心を捉えるための概念)
2. 他の人とのかかわりを通して、他者からどううつるかの視点を持つ(外側からの視点)
 →自分が最初抱いていた自分像というのが、他者との関係を通じて変わったり、作られていく。meの形成。
3. 現在定まっている固定概念(一番最初の前提)を、打ち破ってみる

 無意識のとらえ方の学派による相違点
1. 個人的なものか、普遍的なものか(個人を超えたものか)
2. 無意識の領域を見るときに、過去の体験としてみるのか、未来を予想するものとしてみるのか
3. 無意識のプロセスを、どれだけ意識化し、言語化する必要があるのか

 フロイト
ヒステリー(神経症)の患者に、催眠を施行し、催眠状態の中で強い情動を伴いながら、話すことをしていく
→症状が回復していった
  ↓
苦痛を回避する力を持つ抑圧する力によって、記憶の意義(エピソードそのものではなく、それに対する情動)が意識の外に置かれる。

 心の構造
フロイトとユング−自らの臨床経験から組み立てられているので、必ずしも実証されるわけではない。

・フロイトの精神力動理論
1900年、無意識の発見
幼児期の外傷体験(特に性的なもの、問題)が抑圧される→現在、無意識的に影響を及ぼす
 フロイトの心的構造論
  エス(イド)・・・・生まれながらに持っている、非常に強い欲動。フロイトは、性欲動を中心に考えていた(この時代のヒステリーの患者の外傷体験から)。現在の自我心理学者は、必ずしも性欲動的なエスよりも、自我を中心に考えている。
  自我(ego)・・・・成長にしたがい、エスから自我が発達的に分離してくる。防衛規制defence mechanism。自己破壊を起こすぐらい強力なエスを抑え、なんとか社会生活を適応的におくるための、自分の身を守り適応していくためにある心のメカニズム。
  超自我(super ego)・・・・社会生活を送る上で身についた、社会的に身についたルールや習慣などの、経験的に身についていったもの。その個体が生活してきた環境によって非常に異なる。

この三つが葛藤していくことによって、様々な人間の状態が変化していく(力動)

事例 Aさん(f) 浪人中
 主訴:昼夜逆転で、だらだらした生活
    物のある場所を確認しないと不安−強迫行為 ←自我
        ↓
    自分の感情を出してはいけない(不安、怒りなど)←超自我

→強迫行為に全神経を集中していれば、ほかのことを考えなくてすむ
 →病的にすることで、自分を守っている?
  →強迫行為が始まれば、やめられなくなる

・ユングの心の構造理論

太陽の輪

黒人の夢:車輪に磔になった男
      ↓
   ギリシャ神話のモチーフ?
  →太古の宗教的概念
   →人類の歴史に見る象徴的イメージであり、無意識は個人的な無意識と普遍的な無意識がある。

 自我の防衛規制
→パターンがある−アンナ・フロイト、自我心理学

 性格
人との関わりの中で意味を持つもの(社会的関係、対人状況が含まれる)
  ↓
「問題」として、性格を捉えるとき、環境要因を含めて考える。(性格がたち現れてくる状況、相手によって引き出されるものとしての性格、選択されたものあるいはされなかったもの)

 上記をはじめて理論化したのは、ユングである。
相補性
 人との関係性の間で現れてくる性格の特徴と、自分では認めていない特徴(無意識)が共にあり、それが両方存在するために均衡を保ってる。
→その均衡が崩れているために、心の全体性を回復しようとして「悩み」が現れ、性格を変えようとするような動きとなって現れる。

心のバランスを失っているクライエントに対し、自己治癒力を高めるべく「援助」していく。
→了解可能、理解可能か(わかった、理解できるかどうか・・・・論理的側面)どうかと、共感可能か(想像することによって相手のみになれるかどうか・・・・感情的側面)どうかのバランスが、話を聞く側に重要になってくる。

 病理的には、
一般的に了解可能:神経症といわれるもの
 →しかし、ちょっとこだわりすぎ、いきすぎだと思われるような領域

通常の意識の範囲では了解不可能なもの:精神病
  ヤスパース
 精神病は、一般的には了解不可能な領域である。精神病者は特有の感覚を持っているためである。それを健常者が理解しようとしても、それは先入観となるばかりであるため、先入観を捨て、現象を記述していくしかないのである。「現象記述学」
  ↑
自分とは異なる他人を理解しようとする面で、重要な態度。
何かを捉えようとする場合には、理論的枠組が必要であるが、その枠組そのものが、先入観や偏見を生み出すそのものであると理解しておかなければならない。
→自分の体験や経験に、相手の感情的な体験に照らし合わせているだけで、「共感しているつもり」になってはならない。

 スクールカウンセラーとこども(児童、生徒)
相談できるための条件
 病院の臨床場面とは決定的に異なり、子供の日常生活の中にスクールカウンセラーが入っている。
・自分の「問題」を「問題」視していない。
・問題に気づいていても、相談する気になれない。
・相談する気になっても、適当な相談相手が見つからない。
・相談相手が見つかっても、実際に相談に行けない。

 神経症とその周辺

1. PTSD(Posttraumatic Stress Disorder)外傷後ストレス障害
 ベトナム戦争の帰還兵から研究がスタート。
 そのときの悲惨な状況が、日常生活を維持できないほど強烈なイメージとしてフラッシュバックし、それに対する恐怖から始まって、身体的に様々な症状が(不眠、摂食障害、外出の恐怖など)現れてくる。
 症状は、長期にわたることが多い。そのときの症状や状況、体験を治療により取り除くわけではなく、むしろ確かにあった体験≠ニして自分に取り入れ、統合していくことを目指す(体験を否定しない←その人の人生を否定することになるため)。

2. 神経症 ※プリント参照
 病態としては多彩で、本人はその症状に非常に悩むが、なんとか日常生活はおくれる。症状は了解可能であり、病感・病識がある。
@体験の抑圧。耐えがたい体験を、無意識に押し込める
A感情や葛藤が症状として出る、残る←自我の防衛の手段

 精神病とその周辺

 日常生活を送れなくなる。症状は了解不可能で疎通性がない。病感はあるが、病識がないので治療が困難。病識がないところから、薬の管理や経済の管理が困難である。
 精神病の原因には、三つのタイプがある。
・内因性:他に原因が見当たらない
・外因性:器質的なもの
・心因性:ストレス

 ・精神分裂病
 向精神薬(メジャー)の使用により、精神分裂病の患者も社会生活を営めるようになった。
 完治は難しく、急性期(だいたい6ヶ月〜1年)と寛解を繰り返す。
 急性期には入院することになる。分裂病患者は、外から見るとまったく何をしでかすか分からないため、入院には本人の保護と薬の調整の意味がある。
・破瓜型(解体型):思春期に発症しやすく、進行しやすい。暴れる、自閉的になる、感情が鈍磨するなど、症状がはっきりしている。
・緊張型:20歳前後に発症するが、薬物によりかなり症状が軽減しやすい。緊張が非常に強く、その緊張により精神的に不安定になる。外から分かりにくく、破瓜型とは異なって本人の内面の緊張状態。症状に周期性があり、よくなったり悪くなったりする。
・妄想型:30代以降に発症。普通に生活できるが、非常に妄想が強い。幻想、幻覚症状がある。薬物により、妄想はおさまりやすい。
・残遺型:急性期の症状が残り、無気力などの陰性症状が出る。薬物療法よりも、社会復帰のための支援などが必要である。
 ※陽性症状……外面に向かう行動。急性期に出やすい。

 分裂病の発症率は、どの時代でも人口の1%といわれる。向精神薬の発達により、急性期が長引いたり、人格が崩壊したりすることは少なくなっている。

自我境界の喪失
非支配的状態
  ↓
 常同行動、行為
 観念連合の弛緩(一つのことを思い出すと、それに連れて他の人に通じるような形での論理性のある思考の連鎖がなくなる)

 ・躁うつ病
 精神分裂病とは異なる向精神薬(マイナー)を用いる。

 精神科の入院には、大きく分けて強制入院(症状が重篤である場合、地方自治体の長に認定された指定医から、72時間の入院ができる)、保護入院(保護者の依頼)、任意入院(本人)がある。また、閉鎖病棟(病棟の入り口に鍵がかけられている)、解放病棟(鍵がなく、自由に出入りできる。電話もかけられる)、個室(患者個人を守るための意味があるが、独房に近い)がある。

 人格障害
18歳以上に発症する。

 向精神薬
1. 抗精神病薬(メジャー・トランキライザー、興奮を抑制する)
2. 抗不安剤(マイナー・トランキライザー、神経過敏を抑制する)
3. 抗うつ剤(神経を抑制する)
4. 精神刺激薬(神経を活性化する)
5. 精神異常作用薬 

 うつ病/躁うつ病
 発症は、主に中年期。特に女性は更年期(50〜65歳)であり、男性は老年期(55〜70歳)に発症する事がある。秩序や人間関係を大事にするような、几帳面な病前性格の人が発症しやすいといわれている。したがって、その人に対しての励ましは逆効果であり、休養をすすめる、自然の回復を待ちましょうなどの声のかけ方をする。
 分裂病とは異なり、半年から一年の薬物療法により完治することが多い。周期性はないが、同じような状況にあうと再発しやすい。
 ストレスフルな状況があって、それが解決した直後や新しい環境に移行した場合に発症しやすい。例えば年を取ってからの転居、出産直後(産後うつ病)、転勤、失恋などである。やる気が起こらない、眠れないなどの症状から、罪業感、不眠、貧困妄想、自殺願望(症状が深くなると自殺する気力すらなくなる→ある程度回復すると、自殺願望はそのままに体力、気力が戻るため、回復期に自殺するうつ病患者は多い)などが症状である。
 躁うつ病の場合は、青年期後期に発症する。躁状態の場合は、活発に動き回り、攻撃的で精力的になる。過活動で休みたいと思っても、自分では休めない。

 外因性(器質的)精神病
 脳腫瘍、脳血管障害などにより、内因性精神病と同じような症状が現れることがある。アルコール、薬物乱用のような特定の原因によるものもこれに含まれる。
 原因疾患を治療することにより、症状は改善する。一過性精神病とも呼ばれる。

 痴呆
広範な記憶や認知能力の障害。知的機能の低下と共に、人格の変化が現れる場合がある。

 てんかん
点頭てんかん
けいれん、発作
 出産時に一時的に酸素が行かなかった子供は、てんかんになりやすいといわれているが、原因は不明。発達障害の子供はてんかんを多く持っている場合がある。
 てんかん波という独特の脳波が診断の決め手になる。てんかん患者は、アルコールを摂取すると発作を起こしやすくなる。

宮本忠雄『精神分裂病の世界』紀伊国屋書店.
河合隼雄,谷川俊太郎『魂にメスはいらない』講談社α文庫

インテイク……その患者についての情報を得るための面接
 ↓
初回面接……カウンセラーやセラピストの側が、患者の問題がどういうもので、どうやって扱っていくかについての重要な情報を得る場であり、面接の方向付けが決まってくる。言語的な部分だけでなく、非言語的な部分も重要である。
クライエントと援助者という役割が明確に定義されてはじめて成立するため、互いの立場からの会話であって、日常的な会話とははっきり異なる。

カウンセリング
 人の心を「変える」技術ではなく、カウンセラーとの関係性が人の心を「変えていく」。自ら変える力。内側からの力で「変わる」

 人は変わるか変わらないか
表面的には変化するが、価値観や生活習慣を形成している本質はかわらないと一般的には考えられている。
 P.ブルデュー(仏 社会学) ハビトゥスの研究
  ハビトゥスは生活の中で形成されているため、変わりにくいようにみえるが、実は変化しうるものである。
  ↓
 人間は変化しうるものではないか。

1. 信頼している人の言動
 親、親友、恋人、あこがれの人etc
→それらの人から、忠告、はげまし、承認、受容を受けることによって、自己肯定感や自信がもてる。
 一方で、裏切りを受ければ、不信感や自己否定、劣等感をもつことになる。
  ↓
 自己イメージが変化する

2. 異性とのつき合い
 結婚、同性との付き合い、子育て ← 信頼関係が二者の間でどれくらいあるか(自分を受け入れてくれる場)
→うまくいかないと不信感が形成される

3. 人のまったく違う面を知った時

4. 一人暮し、ゼミ参加、大学入学、サークル活動
→自立や環境の変化から様々な経験をすることにより、自らの多様な面が引き出されたり新しい自分との出会いを感じる。

5. 身近な人の死や危機(病気、生活上の困難)

6. 同一化(モデルの存在)

7. 昇華(失敗体験をばねに不満を次のステップにのエネルギーにかえる)

8. 通過儀礼initiation

 心に傷を受けたとき、人間はマイナスの方向に変わることが多い
→変わろうとするが変われない場合が治療の対象になる
 神経症圏−パニック症状、強迫行為、過食などがある
 →なぜ変わろうとしても変われないのかを考えたとき、心の奥に何らかの寂しさや空虚感を抱えており、神経症という症状に表れるのではないか(←薬物などは行動的に現れている症状を抑えるために使用するのであって、本質的にクライエントの内面的な変化を待つ)。
   ↓
 人とのかかわりの中で安心感、信頼感を体験
   ↓
 自己肯定感につながる(否定的なイメージから肯定的イメージへ)。内的な部分が変われば症状も解消して行くのではないか

 共感することと理解すること
理解−プロセス的な側面を強調。考える部分
共感−感情的な側面を強調
→神経症圏までであれば理解のプロセスから共感のプロセスにいくことができるが、精神分裂病などだと共感はまず不可能である。そのため、認知系のセラピストは共感という言葉を使用せず、理解の用語を使用する。また、クライエントの側が、カウンセラーに共感してくれたと思うことが重要。

 理解するとは
・意識する
  漠然としたものから区別するという動き
 無意識
人によってバランスの取り方は異なる
 自己治癒力・・・・プラスとマイナスの双方の側面がある
 人とのかかわりによって、同じ状況がプラスにもマイナスにもなる
 心のバランスの崩れ(症状や問題行動)が次のバランスの構築へ
主体的に生きる「私」 ←→ 衝動、欲求、欲望

 自分の心を写すのは「他人」
自分で気がつかなかった動機などが含まれていることもある
→カウンセリングの構造(カウンセラーは、クライエントの鏡になる――人間中心学派)
 カウンセラーはクライエントに傾聴する
  例:長い沈黙
   →クライエントの側の心の動きを切ってはいけない(内省をしているのかもしれない)
    →話をカウンセラーからしてしまった場合
    →例えば、次回面接で、「歯医者が治療を勝手に進めた」話をしたとする
     →その歯医者の話をなぜ「そのとき」したのか
     →歯医者=そのカウンセラー と解釈もできる(特に精神分析では。しないのもいる)
      ↓
   他者を知ることによって、自分の行動を理解

 カウンセリングの枠組み
1.時間の枠
フロイトの伝統的な精神分析では、毎日何時間も行っていた。現在の精神分析的なアプローチでは(あるいは他の学派でも)、週に1回から二週間に1回で、時間、曜日は固定。50分から1時間ぐらい。しかし精神科では大体3分ぐらいしか話を聞かない。

2.場所の枠
そこの場所そこの時間以外、カウンセラーはクライエントに会わない(カウンセリングの場と日常生活の場を完全に分ける。カウンセリングの場は、クライエントにとって完全に安全な場所を提供しなければならない。日常の場のルールとは異なる)。日常生活にカウンセリングの状況をひっぱらない。
 →クライエントとカウンセラーの関係は、決して対等ではない。
  カウンセラー個人のことはむしろどうでもよいことであって、一方通行的な関係であり、カウンセリングという枠組を持った特殊な場であって、日常の場でそれが維持できる「わけがない」

3.料金の枠
インテーク(1時間半ぐらい)で、7000円から15000円
8000円から10000円前後が普通
→料金の枠を設定する方がむしろよい。
 カウンセリングを主体的な行動にする。自分が治療するという意識を持っていなければ続かない。またクライエントが金を払っていっているわけだから、カウンセラーにペコペコする必要がなくなる(不満を伝えることに遠慮がなくなる)。

4.治療者の枠
クライエントとカウンセラーの個人の関係から作られる治療の場で、個人と個人の間で結ばれる治療契約であって、他の人間が出てこない。

角田豊『共感体験とカウンセリング−共感できない体験をいかにとらえ直すか』福村出版,1998.

 治療関係
クライエントとセラピストの人間関係をどう理解するのか→どのようにしてクライエントの自己治癒力を引き出すのか。
→クライエントとセラピストの相互関係、共同作業の場が治療関係になる。
 →最終的には、セラピストの側では、その人の人間観が重要になる。

 人間観と治療観の違いからの分類
(1)精神内界からの理解やアプローチが行われるもの
 @精神分析的・・・・無意識や過去の記憶を強調。
 A現象学的ヒューマニスティック・・・・実存主義。現在を重視。実存分析、ゲシュタルト療法、来談者中心療法など。
(2)行動面からの理解やアプローチが行われるもの
 @行動療法
 A論理療法
 B家族療法(システムズアプローチ)・・・・家族療法は非常に大きな概念で必ずしも行動的アプローチではないこともあるが、考え方としては行動的アプローチに近い。
(3)日本で生まれたもの
 @森田療法
 A内観法

 精神分析的アプローチ
1)無意識の存在を仮定
 S.フロイト:性衝動(リビドー)を重視。
  →独自の発達論やパーソナリティ構造論を発展させる。
2)正統派の後継者:自我機能を重視。
3)幼児期の体験を非常に重視。

 精神分析の発達論
リビドー:性的(本能的)エネルギー
 →このリビドーが様々な働きを持つことが、精神発達の過程である。
  リビドーの発達期を5つに分ける。
 口唇期−0〜1.5才
 肛門期−1.5〜4才
 男根期−4〜6才
 潜伏期−6〜12才
 性器期−12才〜成人

エス・・・・その人が生まれながらにして持っている欲動。破壊的な性質を持つ。快楽原則を追及する。
自我(エゴ)・・・・エスをうまく調整していく役目。認知、思考、判断、知能などの現実検討能力に関係。
超自我・・・・社会のルールが内在化したもの。自我を監視。

フロイトの後継者
・正統派(自我心理学)
  A.フロイト:性衝動にあまり注目しない。子供の発達を研究したが、プレイセラピーを否定。
  H.ハルトマン:自我の調整機能以上の積極的な役割を強調。
  M.マーラー:早期の母子関係に注目し、発達理論を形成。
  O.カーンバーグ:境界例の研究。
  E.H.エリクソン:アイデンティティの研究。生涯発達の観点から、老年期にも注目。
・対象関係学派
  M.クライン:男性の発達論中心のフロイトに対して、女性の発達論を中心に研究。遊戯療法は、大人の言語によるセラピーと同等の価値を持つと主張し、A.フロイトと論争を展開した。
  D.ウィニコット:母子関係の密接さと発達への影響について究。
・自己心理学
  H.コフート:自己愛
・新フロイト派−個体の生得的要素だけでなく、環境要因や社会性を追求。
  E.フロム:
  H.サリバン:
  K.ホーナイ:基本的な安全感(子供の存在そのものが無条件に肯定されていること)を獲得するかしないかが発達に影響する。獲得できなければ、大人になってから漠然とした不安感である基本的不安感を持ち、それが神経症の原因となる。

 G.C.ユング(分析心理学)
フロイトは夢を重視したが、ユングは夢だけでなくイメージ(物語、箱庭、芸術的なものなど)を重視した。普遍的無意識を反映すると考えるため。
 無意識−個人的無意識
     普遍的無意識(人類という全体性の中に位置付けた)
  →自己の中に潜在する可能性として無意識を捉える

原型
 ・影・・・・人格の否定的な側面。隠したいと思う不愉快な性質。人間の本性の中でも、原始的なもの、劣等的で無価値なところを持つ自分の中の他者。しかし、実体のあるものには常に影が存在し、影こそが人間らしさを作っているものともいえる。
 ・アニマ アニムス・・・・異性が抱く、男性像と女性像。クリエイティブな可能性に結びつくために必要なもの。
 ・グレートマザー・・・・母なるもの。母親らしい心配り、いたわり、成長、豊穣の肯定的な面と、すべての秘密、暗黒、奈落、死者の国、誘惑、運命のように逃れられない身の毛のよだつものすべてのような否定的な面がある。
 ・トリックスター・・・・神話などに現れる、マイナスのイメージの英雄。破壊的なイメージ、半道徳的なイメージ。しかし、トリックといわれるように、なにかをきっかけにクリエイティブになっていったり、無意味なものが意味のあるものに変わったりと、予想外の働きをすることもある。

自我:ある程度の統合性を保つ安定した状態
自己:安定性を崩してでもより高いレベルを志向する
 →人生の目標として、より高いレベルの全体性を目指す。

 分析心理学の治療
・安定を目指す、自我の願望に即したものを治療目標を設定する。
・症状だけを取り除くだけでなく、問題があると言うことは、新しい自分や新しいものへの変化のきっかけである、と捉えることによって、それを乗り越えることによって新しい自分を作っていくという事に治療目標を設定する。

 アドラー(個人心理学)
・人間の行動には何らかの原因があるとフロイトは考え、原因を確かめようとしたが(原因論)、アドラーは、人間の行動には何らかの目的があると考えた。つまり、人間の行動を決めるのは過去の外的な事実ではなく、現在の自分をどのように受けとめるかという主観的な事実であると考えた。心理療法や日々の生活でも、いまどうしたいのかを重視する。
・人間は分割できないものであり、人間を全体として捉える(人格構造論を否定)。

 クライエント中心療法(現象学的心理学)
※現在はperson-centeredとよばれる場合が多い。クライエントとカウンセラーの関係だけでなく、対等なエンカウンターグループとして出会うという意味を持つため。

C.ロジャーズ
 臨床経験から構成されているフロイトの心理療法は実証できないため、それに反対し実証を重視した。
 従来セラピストとペイシェントの関係であり、セラピストが治療の方向性を決定していたが、ロジャーズの考えではカウンセラーとクライエントの立場は対等であり、カウンセラーは方向性を決定しない。
 人間=有機体(organism)
  人間の内的な反応に焦点を当てる。人間自体は、欲求充足の志向性を持ち、信頼に足るものと考える。

 無意識:人間の内面全体=有機体の反応を反映しているもの
意識:無意識を象徴する能力(有機体の反応を概念にする機能)
 意識と無意識のずれをうまく一致させていくことが重要であり、個人は、うまく機能している人間である。

 成長を促進する条件(カウンセラー側の態度条件)
@純粋性、真実性(genuineness)
 個人の内面的一致をする。クライエントの感じ方と異なっても、表面的に納得したフリをするのではなく、違うことを素直に認めること。
A無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)
 完全な受容complete acceptance
どんな時でも、カウンセラーが肯定的で受容的な態度を持っていること。判断も評価も含まない。これがあるからこそ、クライエントの変化を促すことができる。
 現在では、尊重(prizing)といういい方もされる。
B感情移入的理解(empathic understanding)

※カウンセリング・マインドという受容的態度を示す代表的キーワードは、もともと教育の実践から出てきた言葉。

 当初ロジャーズは、あらゆる現場でその3条件が当てはまると考えたが、精神分裂病ではまったく効力がないことから、受容ということができるベースには、人格的な成熟が必要であるとした。つまり、子供や精神病の患者にはそのままの形では適用できない。
→教育現場では、そのままの形では使えない。
 何を受容するのか。
受容というのは、考え方を認めるというのではなく、その人の存在を認めるということである。

『ロジャーズを読む』岩崎学術出版社

 人間性心理学(humanistic psychology、第3勢力と呼ばれる)
 ヨーロッパの人間学派をベースにし、アメリカを中心に展開
@ビスワンガー:精神分析、フッサールの現象学、ハイデッガーの現存在分析を学ぶ。
AV. E. フランクル:実存分析
  ↓
 この二つをR.メイがアメリカに紹介。実存的テーマを重視する。実存とは、あるがままの自分、一個人の存在者としての自分を重視する。
  ↓
 A.H.マズロー:トランスパーソナル(第4勢力と呼ばれる)
 ロジャーズ:フォーカシング(ジェンドリンたちと研究)
       エンカウンター・グループ

 自己実現self-actualization, self-realization
自らの持っている能力の潜在性をいかにして発揮して行くかを重視し、その潜在性の発揮は積極的になされると考えた。

 フォーカシング(体験過程)
 人間存在は他者及び状況との絶え間のない相互作用のもとに、刻々と体験をし続けている過程そのもの
 自分(organism)の感じ(felt sense)に注意を向け、その感じを味わい、その感じを表現する言葉を見つける。
 6つの段階
1. 空間を作る:自分の身体に神経を集中する。
2. フェルトセンス:
3. ハンドル(取っ手):
4. 共鳴させる:
5. 尋ねる:
6. 受け取る:

ジェンドリン『フォーカシング』福村出版

 行動論的立場
 行動療法の言葉の出現−B.F.Skinner, 1953
 アイゼンクEysenck
あらゆる行動は学習性のものであって、神経症でさえ不適応的に学習された行動の結果であって、他の学習と何ら変わることはない。
問題行動に焦点を当てるので、気持ちの問題というよりも行動の問題として治療設定をおき、治療を受ける側の方にも目標が明確になる。
Behavior therapy and neuroses, 1960.
 最終的に、神経症に行動療法が有効である。
 系統的脱感作法、ウォルピ、1958
 日本でも、夜尿症や小児緘黙の治療に効果があると認められた。

社会的学習理論−モデリング療法
認知行動療法−ベック、うつ病に効果。

 処遇や治療は、その「実際の効果」によって価値が決まる。
@対象となる人の問題
 人の抱える問題は、獲得された行動のパターンである(病気を対象とせず、その人がとる認知の歪みや実際の行動そのものを問題にする)。
 問題行動を謝った学習やまだ学習されていないものとして捉える。その行動パターンを維持したり、新しい行動パターンの獲得を抑制している状況を変化させる。
A「行動」は何らかの形で観察し、記録することができなければならない。
B処遇手続きも共通認識をもつ。誰が見ても誰がやっても同じにならなければならない。
C問題行動と処遇方法の具体性、客観性が、処遇の有効性を示す前提条件になる。

 治療過程
治療開始前
 ベースラインの査定
→どのような種類で、どれくらいの段階であるのかを多面的に調べる。
 行動分析
  ↓
治療仮説を立てる
  ↓
治療的介入
  ↓
その結果を査定
一連のプロセスは、方法論的に客観的で厳密に行われる。

標的症状は行動であって、主訴への解釈はしない。例えば、人前での緊張が強く、手が震える人の場合、精神分析のように主訴と背景になっているものの因果関係を考えない。
 上の人の場合、自立訓練法と系統的脱感作法を使用した。

 論理療法 エリス.A
 ゲシュタルト療法 パールズ.F.S
 家族療法(システムズ・アプローチ)

 患者とみなされている人:IP(Identified Patient)
 IPと他の家族員との情緒的な関係、行動面の相互作用、コミュニケーションのあり方(意識的、無意識的)に注目する。
→その家族システムのもつパターンの変容
 個人が自己治癒力を持っているのと同様に、家族システムも自己治癒力を持っていると想定する。
 むしろIPは、家族システムの中での犠牲者(影響を受けやすい人)であり、IPが変わればいいという一種の悪者を作り出さず、今までの対処療法的なアプローチだけでなく、予防も考えることができる。

(3)日本で生まれたもの
@森田療法 森田正馬
 森田神経症
神経症の中でも、対人恐怖に関係する。

A内観療法 吉本伊信
 IWA宿泊研修――集中療法
  ↓
 日常生活の中で――日常内観

自分にとって大事な人間との関係性の中で、
・その人に世話になったこと
・して返したこと
・その人に対して迷惑をかけたこと
を考える。

『「聴く」ことの力』鷲田清一,TBSブリタニカ
『プロのカウンセラーの聞く技術』東山鉱久,創元社

 精神医学や臨床心理学では、精神科医やカウンセラーの個性が重要になってくる。
→一定の診断基準があり、それに対する治療方法があるのが一般的な医学であるが、それとは異なり、その人の個別性が重要になってくる。
 ・相互主観性
 ・共時性(同じ時間の中で接触する)

家族システム理論の進化と発展

1.二重拘束理論
 ベイトソンdouble bind theory(1956)
 コミュニケーションには複数のレベルでのメッセージが含まれている。
例:
「好きなことをしていい」という。
→では「ゲームをしよう」とするといやな顔をする。
 →そこで「勉強をしよう」とすると、「好きなことをしていいといったじゃないか」という
  ↓
相手が何を要求しているのか、受け取る側に分からない。
・言語レベル
・情緒レベル
→この二つが同じものであれば問題ないが、問題はこの二つが異なる場合。
 言語レベルと情緒レベルで異なるメッセージを送ると、受け取り側はどう動いていいのか分からないため、動けなくなる。メッセージは肯定的にもなり否定的にもなるが、そのメッセージを送る側が一方的に決めている。
 →そのようなやり取りが家族間で多くあり、それが積み重なっていけば、ある種の精神病的諸症状が現れてくるのではないか。

2.自己修正する全体
ヘイリー サイバネティック理論(自動制御、人工知能)
 →家族成員が、互いの行動を制御し合う。
  →家族階層のより高いレベルによって、より低いレベルがコントロールされている。

ラッセル 論理階層型理論
「この伝言板に書かれていることはウソです」
  ↓解釈
 1.陳述
 2.陳述の陳述

3.変容する開放システム
ベルタランフィー(ドイツの生物学者)が、一般システム理論を発見(1945年)。直線的因果律が従来一般的であったが(一つの原因から一つの結果が現れる一対一対応の関係)、より自然界を複雑に記述し、円環的因果律(循環的因果律)を考えた。ある原因から結果が生まれたとすると、その結果がまたある原因となり次々と次のシステムに行く可能性を示唆した。
  ↑
オズワルド:このことを利用すると、家族システムを理解しやすくなるとして治療論に導入。
 chang → transform
病理や症状、関係の改善のような一時的な変化ではなく、永続的に働く変容のシステムへ介入することが必要である。
 開放システム vs 閉鎖システム
一つの大きなシステムは階層性があり、様々な下位システムから構成されている。下位システムは独立しているのではなく、相互に開いている(外の環境との交換がある)。その逆にあるのが閉鎖システム。
 システムは外から見ると内部の構造が分からないが、外の環境とやり取りをするところや時間的に変容するところ、システムの成長や発達のみが外部から観察可能である。その意味で、家族システムは開放システムである。それゆえに、不安定な部分や理解しがたいところがある。

4.オートポエーシス
 システムの産出過程や行為を問題にする。
 3も4も直線的因果律を否定するが、3の方は外界とのつながりを重視する。4は閉鎖システムを重視し、システムは内部から生み出されると考える。
 ホフマン
円環的思考を重視し、因果律よりもシステム内の相補的な関係に注目する。
また、「問題」を肯定的側面で重視する。従来は病理を持っている人がいたとして、そのことによって起きている否定的側面を解決しようと試みる。システムズ・アプローチは、その否定的な側面自体がシステムを維持している可能性に注目する。
まず現状を分析し、それからどう変化していくのかについてを重視する。システムの偶然性や不安定さがかえって自己変革の契機になると考える。

 家族療法各派の理論
1.ボウエン学派・・・・精神分析的。集団の中で個人がどう自立していくか、あるいはその距離を問題にする。
2.コミュニケーション学派・・・・ベイトソン
3.戦略学派・・・・ヘイリー
4.構造学派・・・・ミニューチン。家族システムを構造的に捉える。家族の構造そのものをよく観察するが、伝統的な親のグループと子のグループを重視する。
5.行動学派・・・・ブリーフセラピーに近い。セラピストは家族に様々な指示を出しながら介入していく。
6.社会的ネットワーク学派・・・・ソーシャルワークに近く、核家族を一つの家族だけでとらえるのではなく、家族が属する社会集団からの対応を考える。

日本家族心理学会(理論中心)
日本家族療法学会(臨床家の集まり)