12月11日
知性論についての論争
言語ではないジェスチャーの表出も傷害されている
ASL(American sign language)という、音声言語にも匹敵するぐらいの手話の失語≠フ例がある(プリント参照)
↓
象徴する機能自体が障害されている。
→反知性論(プリントのような)は、WLの症例から言語機能が傷害されているのであって、象徴機能(パントマイムなど)は生きていると主張。
Boston学派−古典論、局在論、連合説、皮質−皮質説、反知性論
言語の半球優位(健常に育った人の場合)
右利き成人:99%左優位
左利き成人:2/3左優位
↓例外
右利きで、右半球損傷による失語=Crossed aphasia交叉性失語
脳=neural networkという物質過程。しかも、人間と動物でも本質的に違いはない(機能の違いは、neural networkの違いとしか思えない)
言語の半球優位の実体
右半球の言語機能
ex. left hemispherectomy左半球切除術→右半球の言語機能がどうなっているかが分かる
言語理解……麻酔が覚めた時点でも、失語症検査で使われるような「目を開けて下さい」などができる。術後18ヶ月まで記載されているが、一貫して'good'→相対的左半球優位程度の違い
言語表出……発話も書字も×。Jacksonが指摘したようなコミュニケーションを取るための命題言語(proposional
speech)が出てこず、emotionalなものなら出てくる→絶対的左半球優位
↓
split brain分離脳
左右の脳を結ぶ交連線維を、てんかん(異常な電気活動を起こす)の治療のために切断する手術。
※agenesis of corpus callosum脳梁無形成症
先天的な機能異常なので、他の発育不全を起こすことが多いが、まれに脳梁のみがない場合がある。
Roger Sperryの分離脳の研究
二つの比較的独立した高次機能がある(プリント参照)
右半球でも、言語理解力は保たれている。
↓しかし、右視野に数字を提示すると、反応した。しかし反応は、
cross cueing交叉性手がかりによるのではないか(発話筋などの両側の刺激の作用で、マッチングできた)
↓
左手で書字する分離脳の子供
→右手は指先で書く。左手は肩で書いている。
→筋肉と脳との関係は、交叉性一側支配であるが、正中線に近づくにしたがって、両側性の支配を受ける割合が高くなる。
→表出に右半球が関係しているわけではない。
どうして右半球でも、言語理解が'good'なのか
→優位半球による抑制
右半球にも言語理解の能力があるが、左半球が抑制している。
右半球は、本当に言語を習得できないのか
infantile hemispherectomy(乳児の半球切除)――出生時の脳損傷で、経験的にてんかんや発育遅滞が起ることが分かっている時に行われる
※幼児では、言語を少し習得した時点で半球を切除され、言葉を習得しなおした子供の例がある。
↓
Dennis
生後21日で半球切除。
左2例、右1例。
↓
麻痺も皮質盲も起らず、9歳の時行われた知能検査でも、ほとんど他の子供と差はなかった。
しかし、文法能力の詳細な検討を行ったところ、右半球のみで育った症例では、統語理解が劣る(チョムスキーの影響か?生得論者は大喜び)
統語テストのpassive positiveまでは問題ないが、passive
negativeは問題がある。
↑
Bishopの批判
Dennisらのテストを健常児にさせると、passive
negativeが分からない子供が、ぞろぞろ出てきた。
→Dennisの例は、サンプリングミスであると主張。
→この議論はまだ継続されている。
Norman Geschwind……よくなされているような言語の表出面ではなく、受容面に注目
言語:sensory-sensory association感覚−感覚性連合
higherレベルの感覚の連合によって、言語理解が起る。
→本来、両側性に言語理解が起るのは、妥当なことである。言語理解の半球機能差は、相対的な差にすぎない。
↓
ならば、どうして言語表出は絶対的なのか。
→発話筋の神経支配
↓ ※脳と筋は、基本的には交叉性一側性支配を受けている。
両側性二重支配を受けているから。
しかし、最も精密な運動である言語表出の筋にとって、両方からインパルスが届くのは望ましくない。
→子供の頃から、左半球優位が成立する。
吃音を持つ人に、アミタールテスト(頚動脈にアミタールを注入し、一時的に片方の脳を麻痺させる)を行うと、吃音が軽減、あるいはなくなった。
→左半球に、発話の運動心像が上手く形成されず、両方からインパルスが来て、混乱するために吃音が起る。
↓
乳児の半球切除では、脳の機能発達は同じなので、切除しても可塑性が働いて、右半球で運動心像が形成される。
↓
本来なら、両半球が言語を習得する能力を持っているが、何らかの理由で、発話に関して左半球優位となる。
→多少壊れたぐらいでは、右半球への抑制は働いており、失語症という形で障害として現れる。大きく損傷されると右半球の抑制がとれ(最も極端な形は半球切除)、あるいは新たに言語を位置から獲得できる。
言語の半球優位の生物学的解剖学的基礎
解剖学的な差はないというのが、長い間の通説だった。
Geschwind&Levitscky
100例の脳を調べ、側頭平面planum temporaleの長さは、左半球が60%長いことを、Scienceに提出した(はじめは、いろんな雑誌にリジェクトされ続けた)
↓
その後、様々な研究が提出され、生得性が認められるようになった。どれでも、65〜75%で左半球が右より大きい。