危機介入 crisis intervention

 危機状態にある人に対して、その問題発生状況に応じた集中的で具体的な働きかけを行なうことで、バランス状態を元の状態やよい状態に回復させる心理的援助の方法。危機状態とはキャプラン(1961)によれば、「人生上の重要目標の達成が妨げられたとき、初めに習慣的な課題解決方法を用いて解決しようとするが、それでも克服できない結果発生する状態」と定義している。危機状態とはネガティブな意味のみではなく、成長を促進する可能性を意味している。また、危機はライフサイクルの中で(発達的危機)、また家庭、職場などの生活場面で(偶発的危機)発生する。危機状態そのものは病気ではないが、対処に有効な手段を使い果たして病的な症状を示すし、時間的には急性で通常1〜6週間ほどである、という特徴を持つ。危機介入の目的は、危機状態に陥っている人に少なくとも以前のような均衡を回復させることが目的であるため、人格構造の変革や成長を目指すカウンセリングや体験学習とは異なる。危機介入の方法は、@まず危機状態の程度の査定を精神症状、行動障害から行ない、本人の健康度や問題解決能力、緊急保護の必要性を検討する。A次に、危機状態を生じさせた事件や本人の状況認知、対処してきた行動パターン、利用した準備資源を調べ、B介入計画を作成し、実行・修正のプロセスが繰り返される。危機介入は、限られた時間や回数で対処することが要求されるため、現時点の主要問題の解決にエネルギーが集中され、対象もその人だけではなく、家族や職場関係、その他の関係機関との連携も含まれている。