リーダーシップ leadership

 リーダーシップとは、集団目標の達成・集団の維持に向けて、集団のある成員が他の成員に対して肯定的な影響を及ぼす過程である。リーダーシップは必ずしも一人が取るものではないが、公式集団になると役職者の役割行動的な色彩が強くなる。成員がリーダーからの影響を受け入れやすいのは、通常リーダーの方がより大きな社会的勢力を持つからである。
 社会的勢力とは、個人が他者の行動や態度を変化させることのできる潜在的な影響力を指し、フレンチ&レイブン(1959)は、勢力資源に基づく5種類の勢力を挙げている。報酬勢力と強制勢力は人物Aが人物Bに物理的・心理的な報酬や罰を与える力を持つこと、正当勢力はAがBの行動に影響を与える正当な権利を有すること、専門勢力はAが特定の技術や知識に関する専門家であること、参照勢力はAがBからの同一視や好意を向けられることで生じる勢力関係である。
 リーダーシップに関する理論の多くは、どのようなリーダーシップが最も効果的に他成員に影響を及ぼすか、を焦点にする。初期ではリーダーの特性が研究されたが、一般的にリーダーは知能や自信、社交性、達成志向性がわずかに高いものの、研究間で一貫しないために個人特性だけではリーダーシップの解明に限界がある。そのため研究は、リーダーの特性から行動へうつり、行動論的・機能的研究が進んだ。これらの研究からリーダーシップ機能は、集団目標達成機能と集団維持機能の二つに分けられることが判明している。三隅(1984)は、このニ機能に相当するP機能とM機能に焦点を当てたPM理論を提唱した。P機能は目標達成の計画を立てたり指示を与えるリーダーの能力であり、M機能は成員の立場を理解し集団に親和的な雰囲気を生み出す機能である。それらから、集団の生産性の高さが導き出されるとしている。
 古典的なリーダーシップ・スタイルではレヴィンら(1939)の研究が知られている。レヴィンは民主型、専制型、放任型の三つを設定し、それぞれが成員の行動や態度に及ぼす影響を検討した。その結果、民主的なリーダーのもとでは能率的で集団の雰囲気もよい、専制的なリーダーのもとでは作業量は多いが意欲に乏しい、放任型のリーダーのもとでは非能率的で意欲も低いというものであった。この研究は多くの研究を生み出したが、以後の研究結果は必ずしも一貫していないため、PM理論などのリーダーシップ機能を考慮した理論が出現した。また、リーダーシップ行動の結果は課題の特性などの状況要因によっても異なることから、コンティンジェンシー理論(状況理論)が数多く提唱され、その代表がフィードラー(1967)のコンティンジェンシー・モデル(状況即応モデル)やハーシー&ブランチャード(1972)のSL理論やパス=ゴール理論である。特にコンティンジェンシー・モデルでは、課題志向性-関係志向性の次元で測定されるリーダーの特性と集団の生産性との関係が、リーダーと成員との関係、課題の構造、リーダーの勢力の三要因の組合せからなる8つの集団状況によって変動するという。リーダーシップのスタイルは、リーダーの好ましくない成員への許容性を測るLPC得点によって評価され、リーダーが集団を統制しやすいあるいはしにくい状況では課題指向的なリーダーが、中間では関係志向的なリーダーがよい成績を上げやすいという。また近年では、リーダーのカリスマ性や成員の士気鼓舞の結果集団に革新をもたらす変革型リーダーシップなどの視点も提唱されている。