集団 group

 集団とは、二人以上の人々に形成され、人々の間で持続的な相互作用が行なわれ、規範が形成され、共通の集団目標と目標達成のための協力関係が存在し、地位や役割の分化が見られ、同じ集団の成員の社会的アイデンティティを共有して外部との境界が意識され、集団への魅力や愛着を感じる、という諸特性を有している。集団の機能には、一般には目標達成機能と集団維持機能の二つがある。集団が個人に影響を及ぼすことを考える場合、地位と役割、集団規範、凝集性、コミュニケーション・ネットワークの4つが特に重要である。この4つの特徴をどの程度備えているかは集団によって異なり、状況によっても変化する。レヴィンが集団と成員に関する行動科学を「グループ・ダイナミクス」と呼んだように、集団は安定的・静的なものではなく、外部環境に影響を受けながらダイナミックに変化するものであるといえる。

 

地位と役割 status/role

 社会の中で人々は特定の位置を占めるが、その順序的な位置を社会的地位といい、特定の地位にある人に期待される行動様式を役割という。役割が集団成員に適切に割り当てられ、遂行されることによって集団目標の達成が促進される。集団成員間の関係の安定したパターンを集団構造といい、課題遂行や成員の意欲に影響を及ぼすが、役割の概念にはアリやミツバチの分業社会に相当する生物学的な役割と、社会化の過程を経て個人が内在化した社会規範のような社会的役割がある。人間の遂行する役割は、多くが社会的に学習され獲得されたものである。

 

集団規範 group norm

 集団内の大多数の成員が共有する判断の枠組や様式のこと。集団規範は、規則として成文化されたものもあるが、暗黙のルールとして存在する場合が多い。集団規範は、成員の行動だけでなく知覚、評価、感情などにも影響を及ぼすことがあり、集団斉一化への圧力をもたらす要因となる。自動運動を用いて実験を行なったシェリフ(1935)の研究では、個々人でばらばらであった被験者の判断値が集団では一つに収束していき、判断の準拠枠が形成されて行くことを示した。集団規範は成員が自分の置かれた環境を解釈し予測する助けとなり、肯定的な社会的アイデンティティを維持することができるが、規範からはずれた言動をするものに対しては同調するように直接・間接を問わず集団圧力が加えられる。

 

凝集性 cohesiveness

 フェスティンガー(1950)の定義によると、集団凝集性は「集団成員を集団にとどまらせるように作用する力の総量」である。基本的には、集団の統一性や結束などの全体的特徴を表すが、具体的には成員間の対人的な魅力度や集団の魅力度など、個人の側から見た集団の魅力として測定される場合が多い。それ以外では、モレノのソシオメトリーによる測定も用いられる。集団凝集性は、メンバーの動機付けや課題遂行を高め、集団規範への同調を促し、集団の崩壊を阻止するが、集団に革新が求められる場合には有害な要因になりうる。例えばジャニス(1982)では、意志決定場面での集団思考の一つの要因は、集団の高い凝集性にあることを指摘している。また、凝集性が高い集団ほど集団圧力は強くなり、集団成員に対して集団規範に同調するように働く力は強くなる。

 

コミュニケーション・ネットワーク communication network

 集団内の成員間に見られるコミュニケーション構造で、成員とコミュニケーション・チャネルによって構成され、成員を点、チャネルを線で表現して図式化される。リーヴィット(1951)の先駆的研究では、成員の中心性/周辺性が異なるサークル型、チェーン型、Y型、ホイール型という4種のコミュニケーション・パターンが実験的に設定され、問題解決の効率や作業への満足度が比較された。その結果、中心・周辺に関する役割分化度の低いサークル型では効率は悪いものの満足度が高いこと、単純な課題ではホイール型の効率がよく、複雑な課題ではサークル型の効率がよいことが示されている。ソシオメトリック・テストによって作成されるソシオグラムも、コミュニケーション・ネットワークを一定の制限のもとに表現したものといえる。現在ではグラフ理論を応用した数理社会学的なネットワーク分析やシュミレーション研究も行なわれている。