自己開示と自己呈示 self-disclosure/self-presentation
他者に対して言語を介して自分自身に関する情報を伝達することを自己開示とよび、自分にとって望ましい印象を与えるために意図的に振る舞うことを自己呈示あるいは印象操作と呼ぶ。自己開示は言語的伝達のみを対象とし意図的/非意図的を問わないが、自己呈示は非言語的伝達も含み意図的であることが多い点で異なる。
自己開示の問題を最初に体型的に研究したジュラード(1964)は、意見や態度あるいは趣味や関心などの話題ごとに、父母、同性や異性の友人にどの程度自分の話をするかによって開示量を測るJSDQを開発して実証的研究を行なった。そこで、人は自己開示することによって自分自身を知るようになり、個人の精神的健康を維持する条件の一つとなっているとしている。また自己開示の機能として、告白によるストレス発散などの感情の表出機能、自分の意見や感情がはっきりする自己明確化の機能、他者からのフィードバックが得られ自己概念を安定できる社会的妥当化の機能、返報性による対人関係の促進、親密感の調整がある。また、一般に女性は男性よりも開示が多いとされている。
一方、自己呈示の機能として、地位の獲得や他者からの報酬の獲得と損失の回避、好意的に評価され自尊心を高揚させるなどの自尊心の高揚・維持、自己概念と一致した行動を取るアイデンティティの確立の三つがある。ゴフマン(1969)は自己呈示を自己表現と関連付け、日常生活を劇場でドラマを演じることのアナロジーとして捉えている。こうした比喩はステージ・メタファとよばれ、ミクロ社会学の演劇論的アプローチへ発展している。ジョーンズ&ピットマン(1982)は、自己呈示の目標を、取り入り、自己宣伝、示範、威嚇、哀願の5種類に分類し、否定的な自己呈示により影響力を行使しようとすることもありうることを示した。またテダスキ&ノーマン(1985)は、様々な自己呈示が防衛的-主張的と短期的戦術-長期的戦略という二次元で分類できることを示している。