防衛機制 defense mechanisms

 自我は、エス、超自我、現実とのバランスを保つため、様々な防衛機制を働かせる。防衛機制は、不快な感情を避け、心理的な安定を保つ働きをするが、過剰になったりすると様々な症状や問題が生じる。
1. 抑圧
 代表的な防衛機制で、本能的、衝動的な観念や空想、記憶や感情を意識から排除し、無意識に押し込める。しかし抑圧された欲求は解決されたものではないため、夢や失錯行為、症状に現れる。
2. 投射(投影)
 受け入れがたい感情や欲求を自分が認めることは不安が生じるため、他の人や物に移し変えること。疑心暗鬼のようにより健常でも生じるが、より重度の病態では現実検討力の低下となって現れる。投影法検査の理論的根拠ともなっている。
3. 転移(置き換え)
 ある対象に向けられた感情や態度を、まったく別の対象に向ける(例えば担当医への不満を看護師に向けるなど)。
4. 昇華
 置き換えを基本とする防衛機制で、性的欲求や攻撃欲求など、社会的に容認されない欲求を容認可能な行動に変容して充足させるなど。
5. 反動形成
 受け入れがたい衝動や欲求が抑圧され、それとは反対の行動で現れること。憎しみの変わりに愛情が意識されるなど。
6. 否認
 外的な現実を拒絶し、不快な体験から目をそらすこと。臨死患者にも、病気の受容過程として生じる。
7. 同一視(摂取、取り入れ)
 自分にとって重要な人の行動や集団の価値を取り入れること。発達において重要で、親からの賞罰や禁止を内在化することで子供は社会的に適応可能になり、他者との同一視を通じてアイデンティティ確立の基礎が築かれる。
8. 合理化
 葛藤や罪悪感を伴う言動を正当化するため、なにか別の理由をつけて情緒的安定を図ろうとする試み。イソップ物語の「すっぱいブドウの狐」のほかにも、失敗を偶発的な原因や外的帰属に求めるなども含まれる。
9. 逃避
 うまく適応できない状態から逃げること。空想への逃避、病気への逃避、他の現実への逃避がある。
10. 補償
 自分の欠点や劣等感を感じている部分を他の部分で優越感を感じることで心理的安定を図る。
11. 知性化
 本能や衝動をコントロールするため、情緒的問題を表象や観念の世界で論じたり、過度に知的な活動によって抑圧すること。青年期に顕著に見られ、観念や思考から感情を分離する隔離と共に作用する。