ソシオメトリー sociometry

 創始者によるモレノ(1953)によれば、「集団の心理的特徴を数学的に研究すること」であるが、実験方法やソシオメトリックテストそのものを指すこともある。その影響は、グループ・ダイナミクスやアクション・リサーチ、相互作用過程分析など様々な領域に及んでいる。モレノの社会構造論は、社会が現実に存在する「外部的社会」と、心理的な構造としての「ソシオメトリック・マトリックス」、この両者の力動的統合としての「社会的現実」から構成されていると主張する。外部的社会の構造は法律などを手がかりに容易に記述しうるが、内的なマトリックスの理解はより困難である。内的なマトリックスは、個人間の感情の流れであるテレ、最小の構成単位としての個人を示す社会的原子、それらがいくつか結びついた社会的分子、さらにそれらがネットワーク化したソシオイドなどの内部構造があり、こうした社会構造を分析する手段が、ソシオメトリック・テストである。

 

ソシオメトリック・テスト sociometric test

 モレノは、小集団における人間関係構造を五つに分類し、それぞれの構造を測定するためのテストを提案した。このテストは、社会的接触の範囲の調査(知人テスト)、成員間の心理学的関係の分析(ソシオメトリック・テスト)、自発的な感情の性質や強さの検討(自発性テスト)、相互作用状況の分析(状況テスト)、私的・社会的役割演技による関係分析(ロール・プレイング・テスト)からなり、人間関係を周辺的なものから中核的なものへと理解することを目的としている。その中でも、もっとも多く使用されてきたのがソシオメトリック・テストであり、一般的には集団成員間の人間関係を「選択(親和)」と「排斥(反感)」を軸に分析する。テストそのものは、対象の集団の範囲や場面を明記した上で、被験者に親和感・反感を感じさせる成員やその理由を列記させるだけである。全成員を行と列に並べ、その関係を記入したソシオマトリックスにまとめられ、相互選択関係や相互排斥関係を中心にソシオグラムが作成される。ソシオグラムは成員間の関係を図示しており、下位集団間の関係やスターとよばれる人気者、孤立児や周辺児を分かりやすく示すことができる。これらの結果を元に、個人の集団内での位置付けを示す社会測定的地位指標(Isss)や、集団凝集性を示す指標(Co)が求められる。この他にも様々な指標が考案されており、多変量解析やグラフ理論などを用いた分析法が考案されている。