解離性障害 dissociative disorder

 解離とは、意識、記憶、同一性、環境の知覚など、通常はまとまりを持っている精神機能が部分的あるいは全体的に破綻したり交代する状態や、身体運動の統制が失われるなどの症状である。解決困難な葛藤状況や外傷体験のとき、それらを精神から切り離し意識変容をきたした状態になる。
 1889年、フランスのジャネが『心理的自動症』に感情、感覚、運動、思考の統合が障害された状態として記載している。ジャネは、解離現象を心的力と心的緊張の二つのパラメーターにより体系化した。またフロイトは、1895年の『ヒステリー研究』で解離を抑圧機制で説明している。解離性障害に分類されるものとして、@解離性健忘、A解離性遁走、B解離性昏迷、Cトランスおよび憑依障害、D解離性運動障害、E解離性感覚麻痺および感覚脱失、F混合性解離性(転換性)障害、Gその他の解離性障害(ガンザー症候群、多重人格、一過性解離障害)、H特定不能の解離性(転換性)障害があげられる。DSMでは、離人症が解離性障害に含まれている。治療として、抗不安薬や抗うつ薬を使用して情動の安定を図り、外傷が契機となっている例では外傷体験に対応しながら力動的精神療法を行うのが通常である。また、眼球運動による脱感作と再処理法(EDMR)も効果があるという。