人格障害 personality disorder

 思考や行動、対人機能や認知が大きく偏って固定化し、非適応的になって病的行動を繰り返す精神的な障害。操作的診断基準が一般的ではなかったときは、精神病質と表されていた。DSM-Wでは、言動が奇妙で風変わりを特徴とするA群(妄想性人格障害、分裂病質人格障害、分裂病型人格障害)、劇的で感情的、移り気を特徴とするB群(反社会性人格障害、境界性人格障害、演技性人格障害、自己愛性人格障害)、不安・心配の強さが目立つC群(回避性人格障害、依存性人格障害、強迫性人格障害)を区別している。ICD、DSM共に症状記述的・操作的定義で診断するため、人格構造や障害の発生因を問題にはせず、症状や行動の特徴が社会的障害や苦悩の原因となっている場合に人格障害と診断される。
 人格障害の病因は多重であるが、生物学的要因、遺伝子的要因、母子関係、心的外傷が挙げられている。薬物療法より精神療法が有効とされるが、症状軽減のために薬物療法も使用される。

 

分裂病型人格障害 schizotypal personality disorder

 他人と親密な関係を持つ能力の減少と認知的歪曲と奇妙な行動がみられる。具体的には、関係年慮、奇異な信念、普通ではない知覚体験、奇異な思考と話し方、猜疑心、親しい友人がいないなどの特徴が指摘される。分裂病型人格障害は、思考や行動の奇妙さにもかかわらず、安定した人生や仕事を保つといわれている。

 

境界性人格障害 borderline personality disorder

 行動パターンや感情の不安定さを主徴とする人格障害。激しい怒りや抑うつ、焦燥などの著しい気分の変動が特徴である。対人関係では、孤独に絶えられず、過剰な理想化や過小評価を見せ、患者はしばしば自傷行為や自殺企図、衝動的行動や薬物常用などの激しい自己破壊行動を見せる。やや女性に多く、従来は精神療法中心であったが近年は薬物療法や認知行動療法も用いられている。

 

回避性人格障害 avoidant personality disorder

 人からの悪い評価や批判への傷つきやすさなど、対人関係上の全般的な不安を持つ。そのため人間関係を回避したり、少数の人間としか親しい関係を結べない、社会的・職業的活動を避けるなどの回避行動が特徴である。しかし、内面では人にかかわりたいという欲求があることが、対人希求性の乏しい分裂病型人格障害と異なる。治療として、不安定な自分を整理し自己受容するための精神療法や行動療法が使用され、強い不安に対しては抗不安薬が投与される。

 

依存性人格障害 dependent personality disorder

 他者の援助への過剰な欲求があり、分離に対する不安を強く感じる特徴を持つ人格障害。フロイトは口唇依存の人格面での出現は、依存、悲観、自信のなさ、性的恐怖、受動性、被暗示性、忍耐心のなさであることを指摘している。女性より男性に多いとされる。