精神遅滞 mental retardation

 ICD-10によると、「精神遅滞は精神の発達停止あるいは発達不全の状態であり、発達期に明らかになる全体的な知的水準に寄与する能力、例えば認知、言語、運動および社会的能力の障害」と定義されている。診断は知的発達水準の遅れと社会的適応能力の弱さの二つの要素から評価され、知的発達水準の評価は田中-ビネー式検査やWISC-Vなど、適応行動評価として新版S・M社会生活能力検査やABS適応行動尺度が用いられる。原因疾患として明確なものは、感染および中毒(風疹、トキソプラズマ原虫、有機水銀中毒など)、外傷または物理的作用(難産等)、代謝障害や栄養障害(蛋白質代謝障害など)、染色体障害(ダウン症など)、胎児期の障害(早産など)、出生後脳障害(脳炎、脳膜炎など)、精神障害や情緒障害、文化的教育的環境の剥奪、特定不能なものが挙げられ、ICD-10では軽度(IQ50〜69)、中度(IQ35〜49)、重度(IQ20〜34)、最重度(IQ20未満)に分類される。AAMR(アメリカ精神遅滞学会)では軽度から最重度の定義から、支援の程度を断続的、限定的、長期的、全般的として、より実用的な指導・支援プログラムの開発に根ざした定義を行なっている(1992年)。日本においては、精神薄弱という教育・行政用語は、1999年に関連法の改正により知的障害という用語に改められている。