原始反射 primitive reflex

 健常新生児において観察される反射的行動。例えば、支えを失うと両四肢を上に上げてつかむように動くモロー反射(驚愕反射)、口に指や乳首を入れると吸う吸啜反射、何かが触れるとその方向に口を持っていく口唇探索反射、手掌をさわると指でつかむ把握反射、緊張性頸反射、交差伸展反射、自動歩行反射などがある。健常児では多くが生後4〜5ヶ月で消失する。反射が出現するべき月齢に観察されなかったり、消失すべき月齢でも残存している場合には何らかの中枢性の障害が考えられる。

モロー反射 Moro reflex

 赤ん坊の背中と頭部を支えて仰向けにした状態で上体を起こして急に頭部を落下させると、両手両足を外側に伸ばし、その後ゆっくり抱きこむような上肢の運動が起こる。これは大きな音や強い振動でも引き起こすことができ、3ヶ月頃から消失し始める。

把握反射 grasping reflex

 把握反射には、手掌把握反射と足底把握反射があり、指で手掌を圧迫すると全指が屈曲し、検査者の指をにぎりしめる。2日間ぐらいではやや弱いがその後強くなり、誕生後3〜4ヶ月で消失する。吸啜運動により促進される。重度脳障害や上部脊髄の障害によって生じないことがある。

バビンスキー反射 Babinski reflex

 足の裏の外縁をゆっくり踵からつま先に向かってこすると、母趾が背屈し他の4趾が開く(開扇現象)。およそ1年で錐体路の髄鞘化により消失するため、発達検査にも用いられている。

 

刻印づけ imprinting

 離巣性の鳥類では、孵化後の特定の時期に目にした動くものに対して後追い反応を示す。K.ローレンツ(1935)はこれを刻印づけと呼んだ。これはいくつかの点で通常の学習とは異なり、(1)敏感期の存在、(2)練習や経験が不要で短時間で成立する、(3)学習の不可逆性、(4)無報酬性、(5)いったん学習が成立すると同種の他個体にも追従する超個体学習や求愛行動が挙げられる。現在は、刻印づけは特定の動物の極めて初期の特殊な初期学習の一形態であると考えられている。刻印づけは他の離巣性の個体や晩成性の動物にも見られ、同種他個体の認知とも関係しているためエソロジーだけでなく多方面から研究されている。

臨界期 critical period

 生物がある特性を獲得するために、生物学的に備わった最も適切で限られた期間。一定のその期間内で適切な経験をすれば学習効果は永続性を持つが、できないとその後の学習が妨げられたりする。刻印づけやヒトにおける言語の習得などが例として挙げられる。しかしその後の研究では、もっと緩やかな広がりを持ち、ある程度可逆的なものであるため、敏感期と呼ばれることが一般的である。

 

視覚的断崖 visual cliff

 ギブソンら(1960)が乳児の奥行き知覚の研究で工夫した実験方法。床面が透けて見える高さが1mの透明ガラスがおかれ、その向こう側から母親がよんだときに乳児がその上に踏みこむかを観察する。6ヶ月児ではすでにこうした奥行きを弁別し、入ろうとしない。また奥行き知覚に関してはかなり多くの手がかりが生後1年以内に発達する。バウアー(1966)は生後6〜8週の乳児に大きさの恒常性が認められるとしているし、ランダムドット・ステレオグラムを用いた実験では、両眼網膜像差は生後3ヶ月〜6ヶ月の間に用いられるという。