言語の獲得 language acquisition
言語とは、音声・語彙・文法・運用・読み書きなど様々な側面があり、コミュニケーションの手段として最高次のものである。発達に関してはそれぞれで進行が異なるため明確に完成をいつにするかは困難であるが、読み書きを除いて小学校入学時点で一応の完成といわれている。
1歳頃までの前言語期では、無意味発声にはじまって2ヶ月頃のクーイング、6ヶ月頃に「バババ」のような少数音の喃語があらわれ、特定の音声が特定の意味を有するという記号的基盤が形成される。1歳をすぎる頃から一語発話から二語発話への発達や、基本的な統語構造が形成されていく。18ヶ月を過ぎると、表象やシンボル機能の発生の時期であるが、実際の語の獲得の始まる時期は満一歳であり、一歳代の前半はシンボル機能が未形成の段階で語の獲得が行われていく。20ヶ月頃の命名期では、子供は事物に名称があることを認識し、名称を頻繁に尋ねることで語彙を急速に増やす命名の爆発が現れる。そして就学により、会話によるコミュニケーションからさらに書き言葉によるコミュニケーションが成立するようになる。
言語の獲得は、チョムスキーによれば、乳児期における様々な前言語的な認知能力の獲得を背景とし、さらに文法獲得の核となる生得的な普遍文法が各国語の特徴に適用されることによる。さらには周囲の大人の語りかけが小さな子供のいいまわしを修正するように働くことも作用している。
しかし言語はコミュニケーションの手段だけではなく、思考や行動調整のための道具でもある。音声を伴わずに心の中で行なわれる言語を内言、音声を伴いコミュニケーションの手段として用いられる言語を外言というが、ヴィゴツキーは外言から思考を行なう機能として内言が分化してくるとし、言葉を発することなく問題解決ができるとしている。この過渡期に自己中心性言語が存在し、ピアジェはこれを他者の存在を理解していないために現れるもので社会性が増すにつれ解消していくものと解釈したのにたいし、ヴィゴツキーは、自己中心性言語は外言から内言が分化していく過渡期のプロセスであり、見かけ上は外言の形を取りつつも向けられる対象は自分自身で、内言と同じく思考のための機能を果たしていると解釈している。