ジェンダー gender
セックスは男女の生物学的な差異を意味するが、ジェンダーは生物学的性に基づいて文化的、社会的、心理的に振り分けられた役割を意味する。ジェンダーは、所属する社会における性別特性に合致した行動や考え方を、周囲から働きかけられていく中で形成される。
ジェンダー・ステレオタイプは、文化的に固定観念化した「男らしさ・女らしさ」である。達成動機、リーダーシップ遂行機能、家庭における道具的役割は男性的特性とよく対応し、表出的役割や共同性、親和動機、リーダーシップ集団維持機能については、女性的特性と合致する。しかしベム(1981)は、固定観念であるジェンダー・ステレオタイプにおける男性性と女性性は対局する概念ではなく、男女に関わらずその両方を個人が備えることを示している。また個人が持っている男性性や女性性の程度は、ライフスタイルの変化と共に変わってきている。ベムの研究では、両方のジェンダー・ステレオタイプを持っている人は自尊感情が高いなど社会適応が高いとしている。また、女性より男性、教育レベルが高い人より低い人の方、低年齢より高年齢の方が、より伝統的な性役割分業を支持する傾向がある。
性役割の社会化のメカニズムに関する理論は、社会的学習理論、認知発達理論、精神分析、ジェンダー・スキーマ理論がある。社会的学習では、賞罰の強化学習と親をモデルにした観察学習が強調される。認知発達理論は、生物学的性の同一性が獲得されそれを維持しようとして性役割を獲得するとする。精神分析では、フロイトが生物学的性が性役割の習得に対して決定的とした後、同性の親へ同一視する理論に修正されている。ジェンダー・スキーマ理論は、男女の性に基づいた社会的スキーマを身につけ、自己概念の形成や行動様式の習得がなされるとする。