Fhantom of the Opera

 オペラ座の怪人(原題「Phantom of the Opera」)という非常に有名な作品があります。オペラにも舞台にもミュージカルにもなっているのですが、実は映画にもなっています。ちなみに、劇団四季のオペラ座の怪人は、まったくの別物。

 オペラ座の怪人は、ガストン・ルルー(Gaston Leroux)により、1911年に書かれました。

 原作では、ラウルとクリスティーンってのがカップルになって、横恋慕してくるファントムを嵌めようとするも失敗、ファントムはどこかに逃亡し、オペラ座の怪人の伝説は終わりを告げるというきわめてしょぼい話。

 しかしわたしが子供の頃は、正月番組で二日間の二部構成で合計12時間もやっていた覚えがあります。子供心にも衝撃的な作品でした。

 なんでかよくわかんないけど冷や飯食いで、仮面をかぶってずっとオペラ座で生活していた男が主人公。

 たしか、醜いから捨てられたって設定だったでしょうか。男が言葉を交わすのは、オペラ座の偉い人ただ一人で、食事もその人が運んできます。

 そんな男が、たいして歌はうまくないけどいつかスターになることを夢見る一人の女性に会います。

 ずーーーーーっとオペラ座で生活していた男は、何でかよくわかんないけど歌の素養があって、彼女の指導をします。指導の甲斐あって彼女は周囲の人々に認められ、ついにオペラの主役に抜擢されます。

「ありがとうマエストロ」

 栄光への階段を上る女は、恩人である彼にお礼を言います。そして彼に一つの頼みをします。

 

 顔見せてくんない?

 

 いつも仮面をかぶっている恩人の素顔が見たい。これは人間として当然の心理でしょう。親切な彼に、女は愛まで告げました。

 

 しかし、ブッサイクだから捨てられて、ブッサイクだから仮面かぶって、ブッサイクだから一人でオペラ座で生活しなくっちゃなんなかったのがこの男

 

 悩みます。歌がうまいなら顔もそれなりにええんとちゃうか、と短絡的に考えている女の要求に、悩みます。

 女に免疫がなく当然童貞と思われる彼の方にも、やっぱ気があります。もしかしたら、女といっても母親すら見たことないのかもしれません。なんだか梵天丸みたいです。

 でも惚れた女が、顔見せて、アタシ平気やし、男は顔とちゃうねんで、といってるわけです。

 一度は不細工を理由に断わりましたが、どんなアホなツラしてても驚かないと女はいいます。まあ見たいなら当たり前の話です。

 意を決して、彼は仮面をとります。ここに罠が隠されているとも知らずに。

 女、ツラをはじめてみます。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 このアマ、いきなり気絶しました!!

 

 

 

  (T_T)  ←怪人の魂の叫び

 

 ・・・・彼は慟哭しました。

 気絶されるほどブッサイクな自分が悲しかったのか、恩を仇で返しておまけに人生最大級のメガトンパンチを食らわした女に憤ったのか、それは分かりません。おそらく両方の相乗効果でしょう。

 気絶されるほどの顔とはいかなるものなのか興味はありますが、彼の心情を察すると、なんだか胸の奥からこみ上げてくるものがあります。優しい愛の言葉を期待していたであろうに、己の面で気絶されたのです。気の毒すぎて涙も出ません。

 彼はもはや仮面もかぶらず、女を檻に閉じ込めます。ものすごくその気持ちわかります。いいふらされてはたまりません。わたしなら、速攻で始末しているところです。

 百年の恋も一気に冷めた女は「あたし誰にもいわへんから出してや」と勝手なことをいいます。当然出してくれません。ものすごくその気持ちわかります。西太后なら、両手両足を斬り落として塩漬けにしているところです。

 男は顔だということを全身で証明した女は、バカの一つ覚えのように「誰にもいわへんし」といいます。ムシがよすぎます。織田信長なら、首を撥ねてドクロの盃にしているところです。

 つまり、それぐらい誰が見たってこの女は酷いということです。

 ってゆーか信用できません!気絶するほどのツラだったら、いいふらすかサーカスに売り飛ばすに決まっています。少なくとも、わたしはこの女にこれっぽっちも同情できないです。

 彼の方にも、少しはエロ心があったのかもしれません。でもそれ以上に、彼の気持ちはピュアです。そこにあるものは、純粋な、愛です。

 それをこのアマ!これ以上はないってぇぐらい酷い仕打ちで彼の恩に報い、燃えないゴミに出す勢いで彼のガラスのように繊細な心を踏みにじったのです。誰かこの女に同情しますか?ぶっ殺しますよ。

 その頃、オペラ座では女が行方不明なことに気づいて大騒ぎ。しかし誰の仕業か気づいている人が、ただ一人いました。劇場の支配人です。

 実はこの人、怪人のパパ。彼は父として怪人のことを愛しています。わたしに言わせれば、世間に恥をさらすより仮面をかぶせて飼い殺しの道を選択した極悪人ですが。ある意味、一番悪いのはコイツです。

 彼は醜男の息子に言います。もうやめなさいと。極めて良識的です。

 しかし怪人はやめません。当然です。どうせろくな人生が待ってないんです。しかもその悲しい事実を突きつけたのは、他ならぬ愛する女です。そんな彼に、いったい誰が何を言えましょうか。

 身を翻し、逃げようとするオペラ座の怪人マエストロ。

 その彼を、父として、支配人は撃ちます。父に抱かれながら、怪人は息を引き取りました。

 息子を撃たざるを得なかった父の苦悩。本当ならばものすごく悲しい出来事なのでしょうが、こんなもんどうでもいいです。

 気絶されるほどブッサイクで!

 小さい頃からお面かぶって生きてきて!

 挙げ句の果てにはとーちゃんに射殺される!

 これ以上の悲劇がいったいどこに存在するのか、わたしには分かりません。

 彼は何のために生まれてきたのか・・・・彼の人生の歯車は、最初からネジがかみ合ってなかったみたいです。しかも壮絶ブサイクヅラという自分ではどうしようもないことのおかげで。

 おそらくこんな顔だったのでしょう。

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  


想像図(作成時間2分。さあ気絶しろっ)

  

  

  

 ・・・・よく社会科の教科書にこんな落書きした覚えあります。でもこれじゃオチはついても気絶はできないなあ。深いですね。

 なかなか描写が難しいオペラ座の怪人ですが、一度御覧になってはいかがでしょうか。