5月25日

 前回まで

cognitive psychologyの学習研究は、万能チューリングマシン(任意の入力に対して、任意の出力が出せる計算機械)
→きわめてロジカルに人間の内部が扱える。
 実際万能チューリングマシン的なものを実現させる方法は山ほどある。(デジタルコンピュータ、量子コンピュータ、人間の脳など何でも)=ハードウェアは何でもいいが、問題はプログラムが重要で、そのプログラムの持っていき方次第で、ハードの性能が決まってくる。その方法として、計算数自体を物理的に上げる方法(コンピュータ)だけではなく、プログラム的に万能チューリングマシンをエレガントにする方法がある。
=人間らしい挙動をさせるのにつかえる。=プロダクションシステム

だが、人間らしい行動とは何かを考えた場合、人間は、入力された全ての情報を処理しているわけではない。
  ↓
ある目標を立ててそれを解決することを繰り返しているとして、コンピュータ上で人間の行動をシュミレーションすることを始めたのがNewell&Simon

人間とは、目的思考的な行動をとり、最終的なゴールをむかえるためのサブゴールを決定し、考えることができるという発想から、プロダクションシステムということが考えられた。
 このゴール・サブゴール構造を表現するような、人間構造の記号的な表現の仕方を記述していって、人間の行動をプログラムしていくと、そのプログラム言語が万能チューリングマシンと同等の能力を持つ。
  ↓
単に出力があって入力があるというのではなく、ある目標行動にむかっていくというモデルの上で、人間の構造をプログラムしていくことは理にかなっている。
  ↓サブゴールを設定するために、
・全部の可能性を考慮する。
  →非合理的、無限大できりがない
・何らかの形で、人間の行動を目的思考的枠組みの中で説明しなければならない。
 Newell&Simon
GPS(general problem solving)
 スタートとゴールを引き算して、どこに差があるか明らかにして、距離を最も縮められる方法をとる。つまり、スタートとゴールを明確に定義して、何をするのかを考えるやり方 = 「もし〜ならば、〜しなさい」というルールを階層的に組んでいって、命令を発する。

 人間がどう行為すればいいかの知識のデータベースを持っていて、知識表現をif〜then−で行い、if〜then−の形で表現された知識をプロダクションという。それによって問題解決するシステムを、プロダクションシステムという。
 プロダクションシステムは、適切な構築をされれば、万能チューリングマシンと同等の能力を持つから、人間の脳にもプログラムがされているはずである。実際にそれがif〜then−の形でなされているというのが、プロダクションシステムの考え方。
 機械の知的システムの構築には有効。
   
人間のニューロンの動きをまねをする……コネクショニストシステム(ニューラルネット)
 拡散型のニューロン集団の活動のように、知覚に該当するような値が入力されれば、集団の状態が変化し始めることや、それらの活動の一部がもとの集団にも伝達される(バックプロバゲーション)ような構造をうまく記述すれば、うまく人間の知的な行いや変化する集団をシュミレーションできる。プロダクションシステムの命題記述方式では、きわめて繁雑になるプログラムも、比較的シンプルなネットワーク展開で記述できる。

プロダクションとコネクショニストが知的な行動をプログラミングする際の二つの考え方。
 PDP(parallel distribute procession並列分散処理)

どうしてプロダクション(知識)がエレガントに変化していくかが認知心理学の学習の理論

まとめると、認知心理学では、何らかの形で人間の目的的な行為を算出するために必要な知識の束を想定する。
 →行為を動かすために必要なのは、if〜then−で、その命題を実行するためには、定義と知識があらかじめ必要
  →多大なデータベースを駆使して、人間は行為している。
   →人間の行為自体は、合理的で合目的的である。

学習研究は、知識の束に新しい知識が加わったり、関係や構造が組み変わっていくことが、どうして、どのようなメカニズムで起こるのかを問題にする。

一まとまりの構造をもった知識の束 = schemaスキーマの概念……ある行為に関係するプロダクションの一まとまり
 F.C.Bartlett(英)の想起の研究のなかで、記憶の変わり方にパターンがある。記憶は単なる出し入れではなく、積極的に解釈して保持していく過程であって、自分なりに情報を整理しなおして運用していく枠組みとして、スキーマとよんだ。スキーマ自身、柔軟に変化していくダイナミックな情報の受け皿で、学習者の能動的側面に注目した発想。
 ※現代思想に、高木の論文

 ※未熟なスキーマが熟達化するプロセスの研究
 エキスパートの研究
プロの持っているスキーマと素人のもってるスキーマの構造の違いを比較
  ↓ しかしこれでは、プロと素人の比較にしかなっていない。
では、学習研究として、どのようにプログラムを書き換えられているのか(そのメカニズムは何か?)をピックアップすると、

説明による学習
 何か今のスキーマによる処理ができなくなったら、何故できないかの説明を作る。その説明から新しい知識を抽出し、スキーマを書き換える。
 explanasion based learning
人工知能などに学習させる(machine learning)の分野で技術的に進歩
 Chiらの研究
 考えていることを全部しゃべらせる。(進化〜という研究手法)
 よくできる学生ほどよく説明をする。
  目標概念と具体的概念の間を結ぶ知識であるマイクロオペレータ=説明が産出され、新しいプロダクションが作られる。しかし、機械学習ならこれでOKだが、目標概念自体があいまいな人間の学習としては、リアリティがない。
  ↓
類推による学習
 できなかったとき、似たようなことを探し出してくる。
 限られた経験のなかで現状に対処できなければならないのが、現実の人間で、問題解決に必要な知識を次々産出しなければならない。

 

次週:類推とトランスファーの関係とその発想法の批判