10月19日

 移動と学習
ヴィゴツキー理論の射程(5)

 前回まで

Wertschのアプローチ

 ヴィゴツキーの三角形
  ↓Wertschのパラダイム

 ←ここを拡張

 ヴィゴツキーに足りないものは何か?
→媒介物の多様性が欠けている(言語的記号)
 ヴィゴツキーは、科学的概念(理路整然)と生活的概念(素朴)のシステムを分けた。
→しかし、この二つが複雑に絡んで、文化的生活ができていくのである。科学=高級の西洋中心的で、概念一般とするにはミスリーディングではないか。
 →多様な見方をしなければならない(多元性を無視できない)
  →ヴィゴツキーの拡張
  (一つではない)多元的な記号が、人々の社会的実践の中に含まれている。
   →バフチンを援用(先週参照)

 キャツデン(バフチン的名センスを正統的に反映)
・創造的抵抗
 ある黒人ザンの卒論をめぐる、言語の表現について
→Black Cultureで通りがよく、なおかつ、アカデミックな状況でも使える言語を探索するプロセス
 一致しない者たちの間で作られるダイナミズム
・議論がかみ合わないこと
・権力的に強い声が押さえつける
 →多様な言語的展開があるということ

 共通語と方言
茂呂雄二『具体性のヴィゴツキー』金子書房
 ヴィゴツキーとバフチンをつないで研究
方言――標準語との緊張関係なしには語れない
 教室内の会話分析
→学校的な知の在り方が、方言を使うことによってクローズアップされている(標準語が、知的に強い立場を持った言語)
 →方言という言葉のジャンルと、教室という場のジャンルの衝突に過ぎない
  ↑しかし、茂呂のアプローチでは、非常にオーソドックスな言語アプローチと変わらない(個人が社会に対して発している声が出て来ていない←Wertschも同様)

 バフチンの二つの読み
・Wertschによるヴィゴツキーの拡張
 ・媒介の多様性への注目
 ・先週参照

・視覚の余剰の強調
 ・絶対的個的差異
 ・周縁性

 ヴィゴツキーは参加論者か?

・Yesだと
 単なる先駆者→不完全な参加論として、ヴィゴツキーの読みとしてはおもしろくない

・Noだと
 ・精神と社会、文化の異なる関係性を見ていた。
  社会的でありながら、個的なものだと見るなら、移動へのアプローチも可能性がある。
 ・バフチンの第二の読みと反応
 ・移動の問題への新しいアプローチを開く可能性